すべては人の質
1945年(昭和20年)8月9日、開祖 宗道臣 は、東満州(現:中華人民共和国の東北地方)でソビエト連邦(現:ロシア連邦ほか14の国・1991年12月26日ソ連解体)の一方的な攻撃に遭い、それからの一年間をソ連共産軍の軍政下にあった満州で生活することになりました。このとき、開祖は敵地における敗戦国民の惨めさと悲哀を十二分に体験しました。イデオロギーや宗教や道徳よりも、国家や民族の利害の方が優先し、力だけが正義であるかのような国際政治の厳しい現実でした。この厳しい現実に身を浸された経験の中で、開祖は貴重な発見をしました。それは、法律も政治のあり方も、イデオロギーや宗教の違いや国の方針だけで決まるのではなく、その立場に立つ人の人格や考え方によって大きな差が出るということです。「人、人、人、すべては人の質にある」と開祖は悟ったのです。
−『少林寺拳法副読本』10頁〜11頁より
【開祖の言葉】
日本が戦争に負けた時点で、当時の満州国のソ連国境において体で感じたもの、見たものを基本にして、私は生き方を見つけた。そこから少林寺は始まったのです。
私が住んでいた東満国境開拓団や少年義勇兵を捨てておいて軍隊だけが逃げた。助けを求める女や子どもを振り捨てて、「これは作戦行動だ。どけ、ひき殺すぞ」てなことをいうて逃げた軍人を、私はこの目で見てる。これが日本人だろうか。軍服を着たとたんに日本人ではなくなるんですね。なぜだろうか。縦割り社会、横の団結をむしろ嫌うような組織。そしてお互いが否定しあい、邪魔をし合って、横とのつながりを断っていった。もちろん軍人が全部だめとはいいません。しかし、そうならされた人は、やはりそのことしか考えない。(1980年、鏡開き式の法話)
−『会報少林寺拳法』第22巻第5号(2002年8月1日発行)28頁より抜粋
この世の中のこと、すべて人間が行い、人間が支配し、管理し、計画しておる。人間の質の問題ですよ、これはね。よくなるのも、よくならんのも、要するに一人ひとり、そのポストに立っておる人の心の持ち方にある。こういうことで心の改造をやろうとしているのが宗教、特に金剛禅の大特徴である。 1966年8月 第一次指講(「あらはん」1982年11月号掲載)
人間の考え方を変えることによって理想郷ができるという私の考えは、決して誤りではない。これは、つくらなければならんものです。半ばは相手の幸せを考える者がふえたら、世の中、本当によくなる。これは間違いありません。 1969年10月 第三次指講(「あらはん」1981年9月号掲載)
−『少林寺拳法副読本』172頁〜173頁より抜粋
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