『ああ、世の中って分かんないもんだなぁ』


そんな事が、意味もないのに(充分あるよ)頭の中に浮かびました。
人間、理解を超える事が起こると逆に妙に冷静になれるもんだと言う事を学びましたぜ強制で☆

天のお父様お母様(いや死んでないけど)、及び愛しの従姉妹様悪友殿、あたしは現在世界の不思議体験中です。
いやいや、あたしが引き起こした理不尽ではないよ?

信じてよ。

いやまぁ今まで大概あたしが引き起こし巻き起こしついでに油注いだけどさ。


・・・・・・これからどうしよう。





         【 トキワの森でさばいばる? 】




大気を満たす、澄んだ新緑の匂い。
柔らかくていかにも栄養の詰まってそうな、湿った土の感触。
時折耳に届く、鳥や、聞いた事は無い事もないけど、明らかに居るはずのないモノの鳴き声。
そして眼前に広がった、何ともスバラシイまでに延々と茂りまくった木々。

よくやるお約束的にほっぺをつねるまでもない。
周りを取り巻くそのすべてが、これが『現実』だと言う事を感じさせていた。

まぁあくまで「自分がおかしくなった」と思うなら、これは幻覚であたしは精神病院にいるなーんて展開もありそうだが。
自分がおかしくなったとは思いたくないので、自分の五感を信じる事にする。


「・・・ま、現実逃避してたって仕方ないかな・・・・・・」

小さく、ため息をつく。
いやまぁ、ぶっちゃけ自業自得な気がしないでも無いんだけどさ(思いっきりそうだよ)

ゆっくりと、体を動かす。

特に痛む箇所もない。どうやら大丈夫の様だ。
服は・・・・・・・。うん、何で服装変わってんだよ誰だ着せ替えた奴。
とりあえずツッコミはおいとくとして。

まず、足元を覆うのは艶のある漆黒のブーツ。
鉄を仕込んであるらしく、それなりの重みがある(だって前にスニーカーに仕込んでみた時と同じ感じだし/←何やってんだ)
あつらえたみたいにジャストフィットで、すごい足が楽(重いけど)

着ているのは、袖の無い無地で黒のハイネック。
それは膝下まで伸びており、ざっくりと前に切れ込みの入った、動きを妨げないデザイン。
腰の辺りで、太い艶のある黒のベルトを幾重にも巻き付けてある。
腰より上ぐらいの所までの、こちらは袖の長い上着(こっちも黒)を羽織っている。
そして下には厚手のスパッツ(これも黒)

全体すべて、黒で統一された格好だ。

いやまぁ黒って好きな色ベストワンだけど・・・・・・なかなかいないぞ、こんな徹底した黒ずくめ。
ちょい、と服の端を摘んでみたり手足を動かしてみて検分して、違和感に気付く。

・・・・・あっれ、あたしってこんな肌白かったけ?

しげしげと、これまた黒のグローブで覆われた手を見つめる。
うん、文句なしに綺麗な肌だ。
白魚のようなって慣用表現なんぞじゃ追いつかないくらい綺麗。
繊細できめ細かくて、まるで透き通るみたいな白い肌。

とっさに、これ以上と無い美貌の持ち主だったと、日に当たるのが苦手だった従姉妹の肌を連想する。
だが悪友はここまで白くなかったし、従姉妹の姉のようなちょっと不健康チックな白さでもない。

本気で首を傾げるが、数秒後にすぐ止めた。

だって意味無い上カロリーの無駄だし。
改めて辺りを見回せば、手の届く所に真っ黒い色の、新品のリュックが落ちていた。

・・・・・・誰のだろ?

中を見れば持ち主が解るかも?つーかこれってあたしのかもなーと考え、中を見る。
出てきたのはキズ薬が一つと、ポケモンの世界ではおなじみの、モンスターボールが五個。

やぁーっぱ、ここはポケモン世界かー・・・・・・

少なくともこれで、「ここがどんな世界か」だけは解った。
説明書を信じるとするなら、もう二度と、元の世界には帰れない事になる。

「・・・・・・うん。考えても仕方ないな」

つーかポケモン世界でしてよ奥さん?ええポケモンの徘徊する世界でしてよマダム!
あっちより探検も冒険もしがいのありそうな世界じゃないか!!
未開発の土地とか秘境とか多そうだし!ゲーム外とかナマで見れるんだぞ!?

「これを楽しまずして何を楽しめっつーんだ・・・・・!」

グッジョブ!と思わず握りこぶしで呟いたあたしに罪は無い。ビバ・ポケモン世界。
ああ、でも―――――最高の悪友で、親友のにくらいは、別れを告げておきたかった、な。
少しだけ物悲しい気持ちを首を振って追い払い、鞄の中身の残りをあさる。
財布の中には三千円とトレーナーカード。それ以外には中身は無い。
トレーナーカードを見る。


ひききききききっ


思わず、音を立てて硬直。
そのトレーナーカードには、はっきりしっかり、自分の名前が書いてあった。
しかぁしっ!それだけなら驚くには値しない。
問題なのは、そこに貼ってある写真。
その写真に写っているのは、13年間飽きる程、いやむしろ腐る程見慣れた自分では無く。
さらっさらの銀色の髪、けぶる嵐の灰銀の瞳に真っ白い肌の、同性でも思わず見とれてしまう程に精緻に整った面立ちを持った―――――そんな、どこかミステリアスな雰囲気を漂わせる、超絶とか余裕で言えちゃう美少女がそこにいた。


いや誰だよ!何処の同姓同名人物だよこれ!?(汗)


しばし硬直。

・・・・・・ってまさか!
なんとか頑張って、自分の髪の色を見る。ショートカットなんで、かなり苦労したけど。

「・・・やっぱり」

の髪の色は、予想通り。



      ――――――――光を反射して輝く、見事な銀の色彩だった。



ゲーム開始時の、あの、大量にあった奇妙な質問の意図を悟る。
まさか、< 実際に >あの通りになるとはなー・・・・・・

・・・・絶対、目立つなこりゃ。

自然、ため息がこぼれる。
過剰な目立ち方は、気分が良い物でない事くらいは知っていた。

「・・・・・・まぁいっか」

いーのかオイ。

そういや、マジでここどこよ。

ポケモン世界の森の中――――――という事は解る。しかし、そのどこらへんかが分からない。
じっとしてても仕方ないので、とりあえず移動する事にした。
動いていれば、どこかにたどり着くかもしれない。
そんな寒い訳でもないので上着をザックに詰め込み、背負って立ち上がる。



ガサガサ・・・・・・

計ったようなタイミングの良さで、茂みが揺れる。
そこから野生のポケモンが飛び出してきた!

「げっ!」

そーいや野生で出てくるっけポケモン!
しまったうっかりしてたよ!ってゆーか武器になりそーなモンだって持ってないしー!?

腰に手があたる。そこには、唯一装着されていたモンスターボール。
頼むぜ相棒っ!(まだ顔すら見てないけど!

「――――いっけえっ!」


ぽんっ


軽い音と共にそこから出てきたのは、予想通りアブソルだった。
ちらりっと視線をこちらに向け――――何故か知らんがちょっと硬直する。

そんなスキを野生ポケモンが見逃すはずもなく―――――とたんに襲い掛かってくる!

戦闘開始(カーン)
 


 ■   □   ■   □



結果――――数秒の戦闘でアブソルが圧勝した。

技覚えてて良かったー・・・・・・
アドバンスのゲームで、アブソルをメンバーに入れていたのがこんな所で役に立つとは。

人生って本気でわからんな。

何はともあれ、ほっと一息つくあたし。
つーかまぁ、ほぼ一撃で決まったし?あたしいなくても良かった気がヒシヒシと!(笑)
現実にやるのとゲームの中でやるのとは、けっこー違う。

違いとはそれ即ち。

実際にやる方がゾクゾクして楽しいっ!

役には立ってなかったけどさトレーナーのクセして。
でも、あのバトルの瞬間に感じた緊張感と・・・・・・背筋を走り抜けていった快感は真実で。

あーもう最っ高っっ!良かった日頃の行い良くて!(待てコラ)



『・・・・おい、女。いつまで俺を出しておく気だ』

そんな感じで脳内煮え立たせていると(←危険)いきなり、横から声が聞こえた。
冷ややかでハスキーな、澄み切った低音ヴォイス。
当たり前なぐらいに聞いた覚えのない声に、きょろきょろと周りを見回す。

しかし、見回してもついでに気配をさぐってみても(←何故出来る/ふははは、現役悪戯王を甘く見んな!) アブソルと自分以外は姿形も無いし気配もない。

『どこ見てる。俺はここだ』

「・・・・・・・・・うっそ」

なんと。
しゃべっているのはアブソルだった。

あっれーポケモンって人間の言葉話せたっけ・・・?
はっ!ポケモン世界には実はそんな裏設定が!?(ありません)

いかんいかん、思わず真剣に悩んでしまった。

「・・・ねぇ、何で人間の言葉しゃべってんの?」

『俺は知らん。お前がポケモンの言葉を理解できるんだろう』

・・・・・・うわお。ビックリだね☆思っても見なかった特典付きだよ。
サービスいいなー。

『おい、さっさとボールに戻せ。もしくは逃がせ

不機嫌そうなアブソル。
って逃がせって何逃がせって。

「冷たいぞ相棒!逃がせなんてそんなまだ何もしてないのにっ!!

『何をする気だ貴様』

即座に距離を取って突っ込む・・・というか威嚇するアブソル。
うーん反応いいなぁ。

「いやいや、そんな警戒しなくてもいいじゃないかアブソル君」

『人間などを信用しろと?』

あっはっはーと笑うあたしに冷ややかなアブソル。

・・・・・・あらま、人間不信かな?

心の中で微苦笑を浮かべる。
もともと、野生のアブソルは人間に懐きにくい。
そんなアブソルの中でも、かなりクセのあるタイプな気がする。

何があったかは知らないけどね。

心の中で呟いて、しかし(脳天気な)笑顔のままで続ける。

「そうは言わないさ。でもさ、あたし<こっち>に来たばっかだし――――」

言葉を途切れさせ、ウインクしてみせる。

「それに、一人で歩いてんのもはつまんないし?付き合ってよ、近くの街まででもいいからさ」

これで駄目って言われたらどーしよっかなー言われそうな気もするんだよなー。
・・・・・・素手でゲットするかな野生ポケモン!(限りなく本気)


きっと出来るよあたしだし!(笑顔)


しばし見つめあい(ってゆうか、何か驚いてた気がした)―――――ややあって、アブソルが舌打ちした。

『・・・・・・仕方ない、付き合ってやる』

かなりめんどくさそうではあったが、承諾してくれるアブソル。
わぁいやったねありがとう!(喜)

好みのタイプだしねアブソルって♪短い付き合いだろうし、後悔しないように堪能しようっとvv(上機嫌)

「サンキュ♪
 あ、・・・・そーいや自己紹介して無いよね。あたしは。よろしくねアブソル♪」

『・・・・ああ、よろしくな』


なかなか、楽しくなってきそうだ。






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主人公の特殊能力判明。
昨今のドリーム事情を鑑みるだに超妥当(禁句ー!)