ヒワダに降り続けていた雪は止み、事件は一応の幕引きとなった。 しかしだからと言って、すぐにでも全てが元通りとはいかない。今回の一件によって助けられたポケモン達は尋常でなく疲労・消耗しており、すぐにでも野生に帰すわけにはいかない状態にあった。 R団によって投薬などの実験を行われていただけに彼等の多数は人間不信に陥り、ジョーイの治療を拒んだために回復が遅れているポケモンもいる。睡蓮や紫苑、の説得によって自分の体力も省みず暴れる事は無くなったが、心の傷が癒えるには、相当の時間がかかるだろう。 それらに加えて治療のための物資と人手の不足もあり、トレーナーは少数であるにも関わらずポケモンセンターはひどく慌ただしかった。部屋の外を、ボランティアの人員も含めてジョーイが走り回る足音が響く。 煩わしいと感じなくもなかったが、元々、そう神経質なたちでも無い。 少女は、ポケギアの向こうにいる人物へと頷いた。 「――――ああ。かなりのモンだったよ」 <へ〜え!そんなにもかい> 少女がいる一室は多人数部屋だったが、宿泊人数が少ないために、他に同室の者はいない。 ベッドに腰掛け、脚を組んで肩を竦めた。 「ジュンサーがチョロチョロしてたんで、アタイも見たのは一度だけだがね。ま、それなりの実力者なのは間違いない」 事件の情報は規制されている。 R団に関するものは特に極秘扱いとなっていたが、少女はそのアジトの場所を把握していた。 当然だ、何せ彼女の任務はR団をヒワダから排除する為の調査及び活動の妨害だったのだから。 <あの人に伝える価値アリ〜なくらい?> 「フフフ、それはどうかな」 R団と強盗を倒した主要人物が、同じポケモンセンターに宿泊していたトレーナー達である事を少女は知っていた。 賑やかなツインテールの女と、見るからに怪しい黒ずくめの少女。 こんな二人が行動を共にしていたのだ、目立たないはずがない。 宿泊者の数が少ない事もあり、その行動の断片と事件を繋ぎ合わせる事は簡単だった。 <あっれれぇ〜高く評価してるんじゃないの?そのトレーナー達の事> 不思議そうな少年の言葉に、少女はニィイっと唇を吊り上げる。 「お楽しみは、後々まで取っておくものさ」 <い〜のかね〜、バレたらタダじゃすまないよぉ〜!?> 脅しとも取れる台詞だったが、それが本気でない事を少女はよく知っていた。 彼とは長い付き合いで、もっとも行動を共にする人間なのだ。その性格は熟知している。 知っていて、あえて彼女は問いかけた。 「じゃ、バラすかい?」 <まっさか〜ぁ!> 予想通りの返答。 カリンとイツキは、声を揃えて笑い声を上げた。 彼女達もまた、潜む闇に気付く事は無く。 【 旅は墜落世は勢い 】 波間に、漆黒の帽子がゆらゆらと揺れていた。 ついでに青いドラゴンポケモンが浮いて――――否、倒れ伏していた。海の深い場所に倒れているので、波がくるたびに巨体がぐらつく。放っておけば、波にさらわれてしまうだろう。 が、残念ながら救い手となるべき主人はもうしばらくは放置する気満々でいた。 「くっそ、ブーツの中までグチョグチョだよ。気持ち悪いなぁもー」 全身ズブ濡れ状態のは、顔をしかめて文句を言った。 髪も当然ながら濡れ、銀の髪は白い頬や首筋に張り付いて水滴を落としている。 絶世の、という表現がぴったりと当てはまる美の極致の如き秀麗な面立ちに、濡れている事で色気もプラスされ、その威力たるや偶然近くに居合わせたトレーナーが男女問わずで鼻血と忘我の海に 問答無用で蹴落とされる程 だ。 普段であればその美貌を覆い隠す役目を担う漆黒の帽子は、メノクラゲのように今も漂い中である。 『ご主人さまぁー。モンスターボール、回収してきましたぁー!』 ひらひらと沖合いの方を飛ぶ紫苑の言葉に顔を上げ、はぶんぶんと高速で手を振る。 嬉々としたその表情に鼻血の海が広がったが、それはもう綺麗さっぱりシカトして。 ・・・・いや、 あんなもん視界に入れたくないし。 「きゃー紫苑ちゃんせんきうー!!!愛してるー!!!!!」 『ぇ、ええ!?』 紫苑は危うくボールを落としそうになった。 目に見えてあわあわと動揺している。 ふ、可愛いヤツめ☆ 『わわっわ、わわわわわ私もご主人さま愛してますっ・・・・・・・・!』 「紫苑っ・・・・・・・・・!」 真っ赤になってのお返事に、は きゅんきゅん しながら両腕を広げ。 「さぁ紫苑、あたしの胸に飛び込んでおいでー!!!」 『ふぇええええっ!?』 『馬鹿全開ですね』 『この上なくな』 花が大量に飛び交ってそうな光景を眺めながら、氷月と白夜が交互に呟いた。 天空の背に乗って、達はヒワダを出た。空からであればマサラに戻る道もはるかに見つけやすいだろう、と考えての行動だったのだが、ここに誰も考えていなかった重要な落とし穴が一つあった。 そう。飛行している天空である。 大空を自由に飛べるようになった天空は、テンションが普段よりはるかに高かったのだ。 精神年齢は メンバー中もっとも低い と大評判のドラゴンポケモン天空、ハシャぎまくった遠足前のお子様のよーな状態で、当然ながら 落ち着いて飛行できるはずが無い。 結果、無意味にとんぼ返りしたり急旋回したり急上昇してみたりとアクロバット飛行しまくり見事に体力が尽きて、何処とも分からない場所に 皆で仲良く墜落した のだった。 まぁ今回は、あたしのとっさの判断と紫苑の“念力”で全力ダイビングは免れた訳だけど。 「馬鹿とか言うな愛情表現だ!なんなら白夜と氷月もあたしの胸に カモン☆ダイビィイイングッ!!!」 『断る』 『キモい表現しないでいただけますかそこの 変態 』 「ヒドっ!」 速攻で断りよったこいつら! しかも変態とかゆわれたよ失礼な!!あふれ出るあたしのLOVEオーラだっつの!!!( どっちにしろキモい ) 呆れと見下しの混ざった視線に、あたしはよよよと崩れ落ちて。 『愛情表現』 何故か復唱する睡蓮に気付いた。 なにやら納得したように頷くと、睡蓮はに向かって両腕を広げ。 『かもんだいびんぐ』 「ぅおおおおおおおおおいっ!?!?」 『っ!?』 問題発言噴・出☆ 突っ込むあたし、ぎょっとする白夜。 えええええちょっとすとっぴんぐ停止!フリーズで!! 待て睡蓮、言ったあたしもあたしだが何故わざわざそこを真似る!? 達の反応に、睡蓮は無表情に首を傾げて。 『愛情表現、違う?』 『待て。正気か』 『睡蓮、主殿の言葉を本気で受け取ってはいけませんよ。 これ以上脳がピンク色に腐り爛れた 病原体の温床 が増えてもらっては困ります』 「よりによってバイキン扱いですかい」 『さして大差無いと思うが』 視線がすっげぇ冷たいんですが白夜様。 氷月、勝ち誇ったような笑みを浮かべるな。殴りてぇ。 『・・・・・・・・・あの、どうかしたんですか?皆さん』 無言の攻防が織り成すフリーズンワールド は、海に落ちてしまった自分のモンスターボールと波に揺られていたの帽子を回収して戻ってきた紫苑が、ちょっぴり脅えながら問いかけるまで続いたのだった。 しかし睡蓮、シリアス要員と見せかけて実はボケとは!(やるな!!) ■ □ ■ □ おあつらえ向きに近くに湧いていた灯火温泉に浸かり、海水まみれな服を洗濯して、は手近なトレーナーからポケモンセンターの場所を聞き出した。 話によるとここにはポケモンセンターは無く、“ポケモンネットワークセンター”という施設がその役割を兼ねているらしい。 ポケモンのゲームはかなりやり込み、ポケスペやアニメも見ていたにしても初めて聞く名の施設だった。 ネットワークセンターに到着するまでに分かった事だったが、ここは“一の島”と呼ばれているという。 “一の島”ってマジで何処だここ。 記憶にちらともかすらない島の名に疑問を抱きつつも、はマサラへと連絡を取り、 ナナミさんとオーキド博士からの真っ黒な笑顔に 本気で恐れおののき (背後に般若と魔王が見えた・・・・・!!) 土下座し謝り倒して命乞いしながら(周りから奇異の目で見られた。が、ンな事気にする余裕なぞ無いっ!) これまでのいきさつを必死で説明して誠心誠意、そりゃあもう崇め奉る勢いでお助けくださいと頼み込んで、ようやくしばらく連絡を取っていなかった事のお許しを得たのだった。 いやぁ怖かった。 ヒワダで会った強盗より怖かった! (殺されかけるより怖いよこの人達!) <いい?。そこからちゃんと寄り道せずに戻ってくるのよ> <渡したポケモン図鑑の老朽度も調べておきたい。くれぐれも、騒動に首は突っ込まんようにな> わぁ、見抜かれてる☆(汗) この島探検してから帰ろうと思ってたのに。 「えーっとナナミさんオーキド博士。一つ問題が」 <何じゃ?> 「どうやって戻りゃいーんですかあたし」 位置関係不明だっつうの! しかしの疑問に、画面の向こうの二人は一瞬視線を合わせて。 <あら嫌だ、“一の島”にいるんでしょう? ヒワダからそこまで飛べる程の体力のあるポケモンがいるのなら、飛んでマサラまで戻れるじゃない> 「え。そーなんですか?」 <寝ぼけとるのか。ヒワダよりよほど近いわい> ぎゃふん。 呆れられちゃったよ!てゆうかえ、何、常識なのっ!? 軽くショックを受ける。もともとは異世界出身であるからこそのカルチャーショック、久しぶりの再来である。 <それじゃあ、今度はマサラでね> <忘れんようにな> 二人がそう言うのを最後に、通信が切られる。 ちょっぴりセンチメンタルな気持ちになりつつ、はポケモンセンターの受付で大きめの全国地図を借り受けた。 そういや、地方ごとの地図はともかく全国版見るのは初めてだっけあたし。 空いている席に座り、折りたたまれた地図を広げる。そこに描かれていたのは―――― 「―――――日本!?」 いや、微妙に違う。 けれどその全国地図は、かつていた故郷によく似ていた。 うわ初めて知ったよ、ポケモン世界ってこんな感じの地形になってたんだ! 「へーへー!えっとつまり!?ジョウトとカントーはここだからあそこらへんで、ホウエン地方は九州で。 うわ北海道はシンオウ地方って言うんだこっちでは!!すっげ、面白ー!!!」 ゲームには無かった見知らぬ地方。 ゲームでは知る事のできなかった、地図の外側。 いやぁこれぞトリップの醍醐味! ナマの冒険が楽しいから今まであんま気にしてなかったけど!! こっちの世界の本も読んでみよっかなぁ。新聞は読んでるけど、本はほとんど読んでないし。 歴史とか神話系とか、ちょっと面白いかも? てゆうかさ。 「 天空はこの距離を運ばれてきたのかー・・・・・・・・ 」 どんだけ長距離運ばれてんだお前。 白夜もホウエン出身な訳だけど、やっぱりあそことこっちじゃ気候違うんだろうなぁ。 距離すごいよ、距離。そういやゲーム内でもホウエン地方では、雪降らなかった記憶があるし。 天空が雪見てハシャいでたっけなぁ。寒さに震えながら。 「って、あれ?白夜は最初っからモンスターボールに収まってたけど――――」 捕まえたの、誰なんだろう。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ゲーム製作者? (ボソ) 「あ、そーだ。現在位置確認しなきゃ」 危ない危ない、本題忘れる所だった。 一の島一の島いーちーのーしーまーっ・・・・・・と、おし発見っ! 「へぇ、ここいらはナナシマって言うんだ。 んー・・・・・一の島がここで、カントーがここ。マサラはこの辺りだから――――」 うわ。ホント近いな。 この距離なら、確かに天空で飛んでいける。 まぁ、今度は墜落しないように、しっかりみっちり言い聞かせておく必要があるだろうが。 地図を畳み直して立ち上がり。 ――――――― ぎィいいインッ! 鈍い音が、センターに響いた。 の手には、カラのモンスターボールが一つ、握られている。 前置きナシで襲撃してきたパラスを、の指示を待つまでも無く、睡蓮は“切り裂く”で一蹴した。 「ああああああっ!パラスぅうううううっ!!」 「あんたら何か用?」 悲痛に叫ぶ相手を無視して、はすぅっと目を細めた。 いきなり始まった攻防と悪党面した面々に、センターの各所で小さな悲鳴が上がる。 脅えたり眉をひそめたりと、とにかく反応は様々ではあったものの、巻き込まれるのはゴメンだと言いたげに、他のトレーナー達は被害の及ばなさそうな場所へと慌ただしく避難する。 の視線に脅えたように、何かいかにもヤンキーでぇっすやられキャラの☆とでも大々的に公言してそうな格好と見た目の四人が ずざざざざっ! と後ずさった。 「ききき貴様っ!オレ達に気付いてたのか!?」 「やっぱ止めましょうよ帰りましょうって!背後に目があるんですよこのガキ!!」 「奇襲すりゃ楽勝!とか言ったの誰だ!?」 「いや、それはボスじゃ」 「うるせぇ!いいか、もう後にはひけねぇんだぞ!!」 こちらに背を向け円陣組んで、ひそひそと何やら話し合いを始める四人組。 別に背後からそのまま纏めて薙ぎ倒しても良かったが、まぁどうでもいいかーという事で放置してジョーイさんに地図を返却する。しかし、あんだけ殺気ビンビンで 本気で気付かれないと思ってたんだろうかあいつら。 「コレ、ありがとうございましたー」 「いいえ、元々その為の地図ですから。あちらのトレーナーさん達は、貴方のお知り合い? 何だったら、ジュンサーさんを呼ぶけれど」 「まったく微塵も関係無いってゆうか 因縁とかもミクロン単位で存在するはずも無い 今始めて顔見た相手です。 あ、ジュンサーさん呼ばなくても問題ないですよー、すぐ終わらせますんで☆」 ぐ!と親指を立ててみせたに、ジョーイさんは困ったような表情をして。 「本当は、戦ってもらうのは困るんだけれど・・・・・なるべく壊さないで下さいね」 「はっはっは。壊れた物の修理費はあっちから請求でお願いします」 今回はほら、あたしケンカ売られた被害者だしね☆ ジョーイさんと話をしている間に、どうやらやられ役四人衆(勝手に命名)の方でも話に一応の決着がついたらしい。 四人のうち一人が、ずびし!とを勢いよく差す。 「やいやいやいやいそこの黒ずくめ!オレらの兄弟分にしてきた仕打ち、忘れたとは言わせねぇ!!」 「んな事言われても」 兄弟分って何。 つうか、そもそも誰だあんたら。 「ジョウトでは大層暴れてきたみてぇだが・・・・・・我ら相手に無事に帰れるとは思わない事だ!」 『。暴れた?』 「力の限り」 睡蓮に迷う事無く頷くあたし。実際色々暴れましたとも! 自然公園破壊したりとかゴース軍団殲滅したりとか不良から逆カツアゲしてかたっぱしから叩き潰してみたりとか。 最近では強盗とR団相手にレモンと大暴れ☆だったし。いやぁ輝かしい戦歴だ!! 「今更後悔しても遅い!お前は俺達“ジョウト不良連合”を敵に回したのだからな!!」 「不良連合・・・・・・・」 そんなモンあったのか。 てゆうか、ナナシマはカントーなんじゃ? 「オレ達“密林の四兄弟”が、同胞達の無念を晴らす! ちょっと油断してパラスはやられたが、幸運は二度も続かないと思え!!」 「や、何処がどう密林なのさ?」 もっともな事を突っ込むの言葉は、どうやら耳に届かなかったらしい。 クハハハハ! と悪役笑いをする四兄弟。 話を総合するとつまりは、ジョウトでやられた不良連中を代表?して、彼等はを倒そうと不意打ちしてきた、という事らしい。もっとも、がこの“一の島”に来たのはあくまでも偶然なので、四人は単にたまたま居合わせたジョウト出身の不良トレーナーなのだろうが。は大体の状況を推測して納得すると、睡蓮の方を見て。 「どーするよ。一人でやる?他のメンツも暴れたがってるみたいだけど」 『あの程度。自分だけ、問題ない』 「んー、ならいっか」 先程の攻防で、既に実力差は知れた。 パラスがやられたのを実力ではなく幸運だと思う程度の連中なら、隠し玉を持っているとしても、さして大したものでも無いだろう。睡蓮以外を出しても、そう暴れられるとは思えなかった。 他のトレーナーや客が非難している為に空けられたスペースに睡蓮を伴って立ち、は両腕を組んだ。 さっさと事を進めるべく、挑発してやろうと口を開き。 「そこのア「待ちたまえ、キミ達!」 不意の乱入者によって、台詞を遮られた。 のちょっと怒りを含んだ視線と、睡蓮の無感情な視線とが乱入者の方を見る。 ザコキャラ四兄弟は「何だこの声!?」「いたぞ、あそこだ!」と無意味かつ 不可解 なお約束という名のコントを繰り広げ、ようやくその乱入者を特定した。本気でアレやってんなら見事にピエロだよな、とかなり酷い感想を抱く。 かなり容赦も慈悲も無い心の呟きに気付くはずもなく、不良どもは不快そうに怒りを露にした。 「ああん!?なんだテメェは!」 普通なら多少の怯みを見せる所だが、乱入者もと似たような神経鉄パイプ製の人間らしい。 やけに優雅な足取りでギャラリーの向こうから現われた人物は、演技過剰とも言える大げさな仕草で嘆いてみせた。 「四人がかりでマドモアゼルに襲いかかるとは、いやはや、何とも無粋な・・・・・・」 「何だとぉっ!?」 「いいんだよ、あの黒ずくめのガキ人間じゃねぇから!!!」 びしぃっ!と四人のうち一人がを指し、別の奴が「そーだそーだ、ボスの言うとおりだ!」と同調する。 うん、 めちゃくちゃ言ってやがるなこいつら☆ (怒) 『人間、違う。、ポケモン?』 「ちげーよれっきとした人間様だよ!なんでそこ反応するの睡蓮!?」 『母、言った。他人の評価、けっこう、正しい』 「 カーノーンー ・・・・・・・・」 頭を抱えたの脳裏に、カビゴンがのんびり笑顔で親指おったてる姿がよぎった。 あんたか。あんたの教育方針が原因か! 「邪魔するってえなら、お前から先に血祭りに上げてやるぜ!」 が睡蓮にボケツッコミという名の教育指導を行う間にも、別な盛り上がりを見せるザコ四(省略しまくり☆)。 乱入者は、指先でその見事な紳士ヒゲを撫でつけながらふ、と余裕の笑みを浮かべて。 「良いでしょう。この私の優美にして華麗なるポケモンバトルで!キミ達にジェ「睡蓮、“転がる”ー」 ドゴスッ! 「「「「はぐぁっっ!?」」」」 センターの外にまとめて吹っ飛ばされていく四(略しすぎ)。 はと言えば、何だかものすごくすっきりしたような表情で頷いて。 「よし、ゴミが消えた!」 「「「「「「「えぇええええええええええーっっ!?」」」」」」」 非道な台詞と、あんまりと言えばあんまりな展開にギャラリーから非難の絶叫がわき起こった。 ザコの分際でこんな長く登場するのは許されません。主役はあたしだ! 相手がパラス以外のポケモン出してなかったとかそもそも戦闘始まってないとかポケモンで人間攻撃するってどうよとか色々説はあるが、ポケモン出してなかったあたしに対して不意打ちしてきた連中に対して情けをかけたり、ポケモンバトルの基本ルールを守ってやったりするほどあたしは優しくも礼儀正しくもない。 「お疲れさん、睡蓮」 モンスターボールから一条の赤い光が走り、睡蓮を捉えて回収する。 腰にモンスターボールを装着し直すの耳に、なにやらブキミな含み笑いが聞こえた。 「ふ、ふふふふふふふ・・・・・・・・・・・・・・」 笑い声の発信源は、さっき乱入してきたジェントルマン、もとい舞踏会にでも出る気かお前とツッコミたくなる格好した変なオッサンだった。何となく近くにいたくなかったので、すすすと音もなく後ずさりする。 オッサンはくわぁっ!と目を見開くとロングコートの裾を翻し、に挑戦的な微笑みを向けてきた。更に数歩後ずさる。 ポケスペキャラならともかく、変なオッサンに微笑みかかられた処で嬉しくもなんともないってゆーかむしろ ヒく。 「やりますねマドモアゼル!私の見せ場を奪うとは!!」 「そこか突っ込みどころっ!?」 てゆうか、狙いそれか! 「だが美しくない。実に美しくない戦い方だ!」 のツッコミを綺麗さっぱり無視し、男は人差し指で額を押さえ、大げさに肩を竦めてみせた。 うわ、なんかめっちゃムカつくなこのオッサン。 「第一、その服装からして問題なのだよキミは! なんなんだい、その色彩センスの微塵も感じられない黒一色の格好は!!」 「やかましいわボケぇええええええッ! 見知らぬオッサンに色彩センスについて非難されるいわれは無い!!!」 黒はあたしのシンボルカラーなんだよ、ほっとけ! それに黒一色だとほどよいレベルで皆が“怪しい奴”って認識してくれるから都合いいんだよ!! そんなキレ気味なの反論にもさして堪えた様子も無く、男はちっちっち、と指を振って。 「いいや、キミにそのいわれはなくとも私には指摘する義務がある! それこそが、この美の伝道師アダンの崇高にして華麗なる使命・・・・・・・・・・っ!!!」 「ひたってんな自己満足っつーんだそれは!」 「非難を恐れて理想の実現はならず! たとえ私は自己満足と言われようと ウザい死ね と罵られようと地下数十メートルに生き埋めにされようとも美の伝道を行おうとした相手に変質者として通報されようと この信念を曲げはしない!!!」 「曲げろ!変えろ!捨ててしまえンな信念!!」 そこまで拒否られてなお動くかこの男。 「ゆえに私は諦めない! そう、美しくないもの全てにこの思想を伝道し、世界人類が美を追求するようになるその日まで!」 「そりゃ伝道じゃなくて洗脳だ!気付けオッサン!!」 「そう!真の伝道とは洗脳のようなもの!!」 アダンは仕草だけは優雅に、に向かって高らかに。 「ゆえにこそ! キミにもこの私の崇高な使命を理解できるまでみっちり24時間延々と語り聞かせてあげようではないか!!」 「心底余計なお世話だぁあああああああああッッ!!!!!」 怒りのツッコミと共に放たれたスカイアッパーが、見事に自称美の伝道師・アダンの顎を捉えたのだった。 ちなみにその後、アダンはツレらしいエニシダってアロハなおっちゃんに何処へともなく回収されていきました。 できれば二度とは会いたくないな、ああいう変質者。 心の底からそう思うものの、何故かよく分からない不安感が消えないだった。 TOP NEXT BACK リーフグリーン&ファイアレッド未プレイなのでナナシマ知ってるはずが無い(笑) エメラルドもプレイしてません。だからエニシダは知らないおっちゃん。 そしてアダンは知らない変なおっちゃん。弟子のミクリの身が危ぶまれます。 |