前回の教訓。

ひとーつ人の世に出でてー。
ふたーつ、何か良く分からんー。
みーっつ、と見せかけてななーつ・・・・・って何だこれ。


えーっと待てちょっと(ゴソゴソ/←何かを漁っているらしい)
おーい黒子さーんこれ原稿違うって番○皿○敷から持ってきたネタですかこのカンペ――――って何、違うの?
そっちじゃなくって●太○侍?・・・・・いや知らないよそれ。え、お○さんも知ってる人少ないんじゃないかって?
いやぁ一応夏の風物詩だしあれ。「 一枚足りない・・・・ 」って。

は、時間足りないから先進めろって?
原稿間違えといて良い度胸だなァヘボ作者(覚えとけ!)


・・・・・・・こほん。
     前回の教・訓☆

        天空はよく転がる。それはもうものすごく。(ばーい



まぁそんなどうでもいい(←いいの!?)事はゴミ箱辺りにでも放置プレイに処すとして。
とりあえず、エンジュシティに無事到着です。





          【 暴走!“ぷっつん”の恐怖!! 】






うららかな午後の日差しが、きらきらと降り注ぐ。
その様は、まさしく硝子の破片を撒き散らしたかの如くで。
苛烈に肌を焼く熱を伴う訳では無い、しかし寒い訳では無い・・・・・やや汗ばむ程度、といった陽気。
時折吹く風は穏やかで、肌を撫でる感触はひどく心地良い。

夏の暑さも薄らぎ初め、快適そのもの―――――とまでは行かずとも、過ごしやすくなってきたのは確かな事実。
そしてここ、エンジュシティの一角にある公園の片隅にも、そんな午後をひたすらエンジョイしているトレーナーとポケモン達がいた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よくもまあ、そんなに食えるわな」

公園内のあちこちに作られた植え込み。
その中でも、もっとも人が寄りつかない・・・つまり人目に付きにくい場所に陣取り、樹の根元で白夜のブラッシングをしていたは、呆れ混じりの口調でそう呟いた。
その視線の先で、もれなくお菓子大食い大会実施中の天空はと言えば――――全身から、幸せオーラをだだ漏れ垂れ流し・・・・もとい、発散しまくっている。

『ふぁふぃひっふぇふは、ふぁふぁひほほふぁへふははっへひふふぁぽー!』

ひたすらお菓子を掻き込んでいた短い手(もとい、前足)を止め、ぐっと握り(?)しめて(??)力一杯そう主張する。
が、いくらポケモン言語を解する器用(←それで済ますな!)な彼女とは言え、できない事はある訳で。

「いや、わかんねーってソレ」

ブラッシングする手を止め、半眼でズビシと突っ込む
対して、言いたい事は言ったとばかりにお菓子を(口に)詰め込み直す天空。

『おおかた、“甘いモノは別腹だ”とでも言いたいんだろう』

片目だけ開けて天空を見て、あっさり白夜が解答らしきものを出す。
その言葉に天空は、手を休めずにこくこくと頷いて。

『ぽぉーぽぉー、ほひぇ』

「全部食べてからしゃべれって・・・・」

『そうですよ天空さん。それに、もっとゆっくり食べないと『むぐゥ!?!?』

『ノドに詰まりますよ・・・・・って、遅かったですね』

目を白黒させてジタバタもがき苦しむ天空に苦笑しながら、紫苑が水を差し出す。
慌ててそれを受け取って一気に喉――――といっても、あの完全に丸なスタイルの何処に喉があるのかは不明だ――――に流し込み、天空ははーっと一息ついた。

うーん、手間のかかる奴め。

「今度はゆっくり食べなよー?」

再度、すさまじいスピードで食べまくり始めた天空に、多分無駄だろーなと思いつつも声をかけると、うっすら額ににじんだ汗を手の甲でぬぐう。

「けっこー涼しくなってきたねぇ」

『ですね』

灼け付くような夏が、終わりに向かっている。
それを感じているが故の言葉に、メンバー中もっとも暑さに弱い水タイプの氷月が、喜ばしい事ですとでも言いたげに同意を示した。

「やっぱ暑いのもいいけど、涼しい方が過ごしやすくていーよねー」

うんうんと頷きながら、ブラッシングを再開。
白夜のしなやかな身体に片手を添えて、リズミカルにブラシを動かしていく。
純白の毛並みはブラシに絡む事は無く、むしろ其れをあっさり通して。

『ええ。周囲全てが凍える程でしたら、よりいっそう素晴らしいかと』

いやそれヤバイから!氷月良くてもこっちが保たないっての!!」

ンなもん凍死するだろうが!

そんな事態になったら、おそらく一番最初に天空が凍死する。
何せ一番暑さに強いし。そーゆータイプって逆に、寒いのには弱いんだよね。

やっぱりむせて紫苑に背中をさすってもらっている天空を見て、心の中でそう呟く。
そして、目の前でその体躯を横たえる白夜に視線を戻すと、握っていたブラシを置いて――――――


わしっ。


わしわし、さわさわ。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何をしているんだ、お前は』

「いや、いい毛並みしてるよなーと」

わっしわっしと、艶やかで硬質的なその毛並みを、手を突っ込んで堪能するあたし。
白夜は呆れているのか諦めているのか、されるがままだ。

いいなぁ、これ。

「白夜ってばサラツヤキューティクル?世界中の乙女が嫉妬する毛並みね☆

ぐ!と親指おったてるに、『それは誇張のしすぎでは?』と小首を傾げる氷月。

「甘い!その認識は甘いぞ氷月!」

びしィっ!と勢い良く人差し指をつきつけ、ちっちっちと横に振る。
ふぅ、まったく分かってないなぁ。

「その認識は、例えるならチョコレートアイスクリームコンデスミルク蜂蜜をトッピングしてシュガーパウダーをまぶし、あまつさえ生クリームとあんこをブレンドしたコ○コーラ並い!!!

『胸焼けしそうですね』

『見ただけでな』

うん、あたしもそう思う。
つーかそれもう食い物でも飲み物でも無いよ。

「だって、そんな手入れもしてないのにこーんなサラツヤなんだよ?
 これはもう、乙女のみならず髪でお悩みの全ての方を敵に回しても不思議じゃないさ多分きっと!!!

『・・・・仮定で語るな』

『主殿の髪も、充分お綺麗だと思われますが?』

苦虫を噛み潰したような表情をする白夜に次いで、フォローなのか心底そう思っているのか、いまいち判別つきかねる調子で言う氷月。
その言葉に、置いたブラシを取り上げて肩をすくめて。

「色はねー。でも柔らかい上細いからさ、クセつきやすいんだよね」

特に寝起きとかひたすらボンバー。

まぁ根性無いから、ちょっと梳かすだけですぐ元に戻るんだけど。
薄くは無いのが救いかなー。(あと、枝毛無いのもね)

「白夜ー、どーやったらこんなサラサラになんの?」

『知るか』

はふーん、冷たいな。
でもイヤだけどね、愛想良かったりむやみやたらと優しい白夜。(怖いって!)

そんなん白夜じゃないし。

いい加減ブラッシングにも飽きたので、リュックにブラシを戻して空を見上げる。
其処に広がっているのは、磨りガラスを通して見たような、何とも表現しがたくはっきりしない青の空。
太陽が、雲に隠れている所為だろうか?
いつの間にか、辺りの影がいくぶんか濃く、濃密になっていた。

会話が途切れた、沈黙の空間。

公園の広場から聞こえる喧噪も、噴水の音も。
まるで・・・・この場所のみが、切り離されたような錯覚にすら陥りそうな。


空気が、ピリピリと―――――肌を刺すよう、な。



『・・・・・・・・・・ご主人さま』

最初に口を開いたのは、紫苑だった。
その声には、張りつめた緊張が見え隠れしている。
紫苑の後ろでは天空が、最後のお菓子をザラザラと胃の中へと流し込んでいた。

「ん、分かってる。あんま意識は向けるな?」

あくまで普段通りに言葉を返す
宿す感情は、何処か面倒そうでもあって。

えーっとひーふーみー・・・・多いな、かなり。

すっと目を眇めて、周囲にちらつく不穏な気配と影を探る。
レベルは手に負えない程高くはなさそうだが、それでも数が多いので手間取りそうだ。
こりゃ、まともに相手するより逃げた方が速いな。

『蹴散らすか?』

「時間のムダ。それに、ここで盛大にやらかすのは気がひけるし」

ひやりとしたものを宿した白夜の囁きに、しかしストップをかける。
うずうずしているらしい天空も、一睨みして踏みとどまらせて。

平和〜に遊んでる子供の邪魔はちょっとね。
それに第一、公園のオバ様方やママさんって怒らせると怖いんだぞ!(←そっちか)

「突破口を開いて、トンズラする方のが一番だね。・・・・・・・いったん戻すよ」

小声で囁くと、空のボールに手を


っ!』

「へ!?」

叫びに反応するより速く、視界が急回転する。
重力に従って勢い良く迫った大地に反射的に片手をついて衝撃を殺して転がる。
目の前にある白い身体に、押し倒されたのだと認識するより先に、視界の端を黒い何かが掠めて地面を打った。

グぁっっっ!!

茂った雑草ごと湿った土が抉れて宙を舞う。
ぱらぱらと飛んでくるそれから庇うようにの上に身を屈めて、白夜が無言で殺気を放った。
この技は――――――



「――――――“ナイトヘッド”!?」



押し倒されたまま、眉を寄せてそう漏らす。
同時に木影から飛び出す、複数の黒い霧状の何か!

『これは・・・・・』

「ゴース!」

襲ってきたのは、何十匹ものゴースの群れで。

え、ゴースって徒党組むモンだったの!?
つーか何でこんな所で昼間ッからこんなに大量にわいて出るんだよ!(怒/←ボ○フラ扱い?)

白夜と天空が、示し合わしたようなタイミングで同時に攻撃を仕掛けにかかる。
ここら辺、さすがにメンバー中一番付き合いが長いだけはある。
が、その攻撃は虚しくゴース達をすり抜けて終わった。

『なっ!?』

『何だよこいつらーっ!?攻撃効かねーぞっっ!!!』

白夜が驚愕の声を上げ、天空がヤケのように叫ぶ。

「こいつらはゴーストタイプだから、通常攻撃じゃ通じないの!」

体勢を立て直し、左右前後から迫るゴース達をかわしつつ怒鳴り返す。
周囲をざっと見渡せば、数匹がかりで連携組まれて襲われ、有効な反撃をできずに回避に回っている白夜と天空、囲まれたまま、お互いに睨み合って緊迫状況の氷月。

そして。

――――――おそらく、初めてゴーストポケモンを見たため・・・・しかも、複数で襲われたためなのだろう。
         完全に脅えた表情で、動けないでいる紫苑。


しかしそんな紫苑を見逃すはずもない。
ゴース達の何匹かが、彼女に迫る!


ヤバ・・・・・っ!


動こうにも、ゴース達が代わる代わるで襲ってくるので避けるだけが精一杯。
白夜と天空は距離的に間に合わない、氷月は囲まれていて紫苑を助けに行く程の余裕も無い。
ちっと舌打ちし、少し乱暴だが氷月にオーロラビームでまとめて薙ぎ払ってもらってでもと口を開き――――――




―――――――プチっ




何かが、切れるような音が聞こえた気がした。

「・・・・・・・ぷち?」

意味もなく、その音を繰り返す
いつの間にか、白夜も天空も氷月も――――――ゴース達さえもが、動きを止めていて。
全員が見つめるのは・・・・・音の、発信源。

何故だろう。

心の中で自問する。
音の発信源である紫苑は、まったく動かずうつむいている。

なのに・・・・なのに、だ。

ごくり、と喉を鳴らす。
誰一人動かない。声も出さない、音も立てない。
背筋を流れる冷や汗の感触が、余計に寒気を掻き立てる。


何故こんなにも、「ヤバい」と感じているのだろう?



『う・ふ・ふ・ふ・ふふふふふふふふぅ・・・・・・・っ』



小さな肩が震え出し、ゆぅらりと漏れだした――――それこそ、背筋をぞわぞわと這い上ってくるような不吉さを満載した――――含み、笑い。
アリかムカデが、足元から大挙して身体を這ってくるのにも似た、悪寒がして。

え、えーとあのー?(汗)

戸惑いとイヤな予感と悪寒とあと数割かの混沌とした気持ちをブレンドした心中で、自分に言い聞かせる。
落ち着け、落ち着けあたし!
あそこにいるのはラブリーなあたしの癒し、我が家(←?)の唯一の花な紫苑!!
とっても良い子で優しい気配り上手さん☆な紫苑です!!!

トレーナーたるあたしが、抱きしめる事はしても脅えたりビビったり怖がったり(←それ全部同じ意味)してどうする!!



「し・・・・・紫苑?」



乾いた口内から、掠れそうになる声を無理矢理押し出す。
紫苑がぴくん、と身体を震わせ、ゆっくりと・・・・殊更に恐怖を煽る動きで、顔を上げて。
何か――――そう、には理解出来ない何かであるのは確かだ――――何か、気絶を一足飛びにしてそれを吹っ切れた・・・・さもなくば吹っ切れすぎた、イッちゃってる者特有の、有無を言わさずうわぁ とか思わせる目で。雰囲気で。

にっこり、と。
慈愛にも似た、愛らしい微笑み浮かべて。




『・・・・・・・ブチ殺スv




一瞬の、静寂。

優しく発せられたその言葉を認識した、途端。
ゴース達は、それこそ蜘蛛の子を散らす勢いで逃げ出した。











【―――― しばらくお待ち下さい ―――――】











抉れた大地。

穿たれた、幾つものクレーター跡。

めくれ上がった地面はあちこちに散乱し、手入れされていた木々は樹皮が大きく裂け、剥がれ、枝が折れ・・・・・中には、幹の半ばからばっきりと折れてしまっているもの、一部分だけ大穴が空いてしまったものまである。
そんな、一言で表現出来ない惨状の中、なんかひたすらひらぺったくなったり薄くなったり半分地面にのめり込んでいたりな状態で――――黒いガス状の燃えるゴミ・・・・もとい粗大ゴミ?じゃなかった、ゴース達がそこらに文字通り落ちていた。

これが、ほんの数分の――――体感としては何十分、といった所なのだが――――間に行われた、など・・・・しかもそれを行ったのが、たった一匹のバタフリーであるなどとは、実際に目にしていなければ誰も信じまい。


『・・・・・なかった、オレは何も見なかった聞かなかった知らない知らない何も見てない・・・・・!』

ガタガタと熱病患者のように震えながら、狂人じみた執拗さでその言葉を何度も何度も何度も呟く、バトル大好き(な、はずの)天空。
ずどーんと影を背負ってうずくまっているその後ろ姿を、視界の端に捕らえ―――――は、腹の底から息を吐く。

・・・・・まぁ、分からんでも無い。

ぐったりと、全身を弛緩させて白夜にもたれかかる。
それに文句は言わなかったし、あたしや天空程あからさまでは無かったが・・・・白夜も、今回は(精神的・肉体的に)かなりこたえたらしく、むっつりと押し黙っていて。
当の紫苑はと言えば、現在モンスターボールの中で気絶中である。


「・・・・・とりあえず、紫苑にゴーストタイプは鬼門、と・・・・・・・・・・」

『―――――・・・・・二度とゴメンだな・・・・』

半分放心状態な虚ろさで、紫苑のモンスターボールを見ながら呟けば、白夜が疲れを滲ませた声でぼそりと同意。
ぐったりしながらも、誓う事はただ一つ。




―――――紫苑とゴーストタイプは、会わせてはならない。




でないと死人がでる。今度こそ。









『私としては、また見たいと思わないでもないのですがね』

「!?」

『・・・・・・・・・・・(汗)』

さらっと言われたその一言に、氷月を除いた意識のある者全員が硬直したのは、言うまでもない。
どーゆー神経してんだお前。






TOP  NEXT  BACK