二次試験会場、到・着!
―――――はいいけど、本隊より早く着いちゃったよどうしよう。(←聞くな)





結局、本隊が到着するまでの間、小屋付近の木の上で一休みする事にした。
ぼんやりと視線を空に、足をぶらつかせながらぼけーっとするの姿に覇気は無く、何処かひなびた老人の如き雰囲気がある。会場の近くでは地の底から響いてくるような、何とも耳障りな唸り声―――もといブハラの腹の音が響き渡っている。
煩いなーどうにかならないのかなーとか、昼ごはんは出ないのかなぁとかぼんやり考えながら、頭や肩、膝の上をうろうろちょろちょろしているアークをくりくり撫でたり指でじゃらしたりしながら暇をつぶす。
そうこうしている内に、本隊が会場へと到着した。
自分のシッポと戯れて肩からころんと落ちてきたアークをキャッチして、少し勢いをつけて足を前後に振る。


「よっと」


気合いの無いかけ声と共に、はストンと地面に降り立った。
着地の際の衝撃は、軽くひざを曲げて殺して立ち上がる。
そして、何事もなかったかのような顔でアークを肩に乗っけると、彼女は受験者の群れに混ざろうと―――――


ゾワゾワゾワッッッ


突如、背筋を悪寒が駆け抜けた。
その不快さに、思わず身震いしておそるおそる振り向く
そこには案の定と言うべきか、とにかく上機嫌そうな笑顔でこちらを見ているヒソカの姿があった。

戻ってこなくて良かったのにな。

手を振ってくるヒソカに、内心そんな事を考えながらも律儀に手を振り返す
その肩の上では、どうやらヒソカを“キライ”もしくは“敵”と判断付けたらしいアークが、ヴー・・・・と低く唸って威嚇している。
しかしそれも、この辺り一帯に響く重低音にかき消され、聞こえているとは思えなかった。

もっとも、アークの威嚇程度でヒソカがひるむはずも無いのだが。

しかし、腹の虫もここまで大きいと立派な公害と言っても過言では無い。
ズレた感心をしながら、ふと、ヒソカが戻ってきているのならゴン達も戻ってきているはずだという事実に思い当たる。
四人の姿を捜して周囲を見回す。
キョロキョロしている主人の肩の上で、アークがぱたぱたシッポを振りながら、その頭上へと駆け上った。
ヒソカをなるべく視界に入れないようにしながらも捜索するの視線が、ハンゾーのハゲ頭(笑)を見つけたり、カタカタやってるギタラクルを見つけてしまって光速で目を背けたりしながらも小屋の方へと向かう。



ピ――――・・・・ン



丁度その時、時計の針がきっかり12時を指し示した。
安っぽいペンキで塗装が施された扉が、蝶番を軋ませてゆっくりと開く。


常人の2倍はあるだろう、巨大な(横幅もだが)男。
その前でどでんとソファーに座り、堂々とした態度で足を組んでいる女性。

それはまさに、二次試験担当試験官のブハラとメンチの二人組だった。


うっわー・・・・メンチ腰細っ!
いいなぁ。でも何であんな髪型してるんだろう。いや違和感は無いんだけれども。
ブラハもなぁー。何食べたらあんなおっきくなれるんだろう。(←なりたいのかっ!?


「どお?おなかは大分すいてきた?」

「聞いてのとおり、もーペコペコだよ」


ミュ〜

アークの鳴き声と共に、視界が暗くなる。
顔にはふわふわした感触。
そのふわふわ、もといアークのシッポをつまんで引っ張り、落ちてきた所をがしっとキャッチ。

「どしたのアーク。かまって欲しいの?」

ミュウ!

抱っこされ、上機嫌にシッポをぱたぱた揺らして元気良く返事をするアーク。
周囲が驚いたり緊張したりとしている中、とアークだけはのほほんほのぼの空間を作り上げている。
場違いはなはだしい。
しかし、にも一応試験中だという自覚はあった。
ほのぼのとアークと戯れている訳にはいかない。
アークを肩の上に置いて、指でじゃらしながら視線を試験官二人に向ける。

「んー、ゴメン。そろそろ始まるみたいだし、相手できないわ」

ミッ!?

ピッと耳を立て、むくれた様にシッポでパシパシと後頭部を攻撃し始めるアーク。
無論、痛くも何ともないので気にしないが。


「オレのメニューは―――――豚の丸焼き!!」


オレの大好物、と語尾にハートマークつきそうな感じに弾んだ声で、目を輝かせるブハラ。
そんな彼に視線を向けたまま、ポンポンとアークの頭を撫でる。

「後でかまってあげるから、すねないすねない」

言われて嬉しそうに鳴き、すりすりと上機嫌に頬擦りするアーク。
どうやら、満足してくれたらしいです。



「それじゃ、二次試験スタート!!」



合図と同時に、一斉に受験生が駆け出した。



 ■   □   ■   □



森林公園の中を探し回れば、ブタは結構あっさり見つかった。
捜す時間が約数分という短さを考えると、実は意外と多くいるのでは無いだろうか。

・・・まぁ、それはそれで良いとしても。



「・・・・・・・・・・・うっわ、狩りづらー・・・」

距離にして約6メートルほど先のブタを見据えたままで、顔をしかめてぼやいた。
視線の先にいるブタは、大ブタ2匹に子ブタ3匹の計5匹。
狩るならやはり、食べごたえのありそうな大ブタだろう。
2匹は<子ブタ達を庇うような体勢で、凶悪な目つきとデカい鼻をこちらに向けている。


ブヒッ!ブヒヒブヒ!?(訳:キサマ!子供達に手を出すつもりか!?)

プギギッブヒヒィ!(訳:なんてオソロシイっウチの子達は渡さなくってよ!)

プヒィ・・・・プヒっ!(訳:パパ・・・・ママっ!)


「えーっと。これってやっぱり親子ブタ?アタシ邪魔者?」

むしろ外敵か。

冷静といえば冷静に、グレイトスタンプの群れを見ながら状況分析らしきものをする
こちらに来てからは何度も狩りをする機会があり、それだけに『食料』としての狩りに関しては割り切るようになってはいたものの、それでも、こうも「自分達、仲良し家族デス☆」みたいーな光景を見せつけられれば躊躇いも生まれる。
しかし、ここで見逃してはせっかくのチャンスをふいにする事になる。
何より、見逃したあげくに試験に落ちて師匠の修行が余計厳しくなるような事態は避けたかった。


ブヒ・・・・ブヒヒヒィ〜!(訳:オレが行く・・・子供達よ、父の勇姿を目に焼き付けておくんだぞ〜!)


「わっ来た!」

一際高く鳴いて突進してきたグレイトスタンプに、叫んで意識を切り替える。
何となく感じていた、微妙な罪悪感や躊躇いはあえて無視をして。
土を蹴りながら撒き散らして突進する大きなグレイトスタンプに、自分から一歩近づき、身を沈めて。



ゴッ!



見事に決まったすくい上げるような蹴りに、グレイトスタンプの巨体が、高々と天を舞った。

許せブタ。
大丈夫、ブハラが美味しく食べてくれるから無駄じゃない!


ブヒヒー・・・・プギィ・・・・(訳:パパー・・・・格好悪いよ・・・・

ブヒヒ、ブヒヒィイ〜!(訳:さぁ、さっさととんずらするわよ子供達!)


何か鳴いて、振り向きもせず森の奥へと消えるブタ達を尻目に、
ブタの丸焼きってブタに直に火ぃつけるのかなーどうなんだろう?とか考え始めるだった。





「まあいっか。直に火ぃ付けちゃえ」



アバウトすぎだ。







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ヒロイン、なんだかんだ言ってる割にはアバウトです。