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14時17分 |
タンブレロのカーブで、セナの駆るウイリアムズ・ルノーはコースアウト。
ぞっとするるほどの衝撃でクラッシュ。意識を失ったセナの体は壊れたボディーの薄板の間に数分間留まる。
セナは注意深くマシーンから引き出され、草の上に下ろされた。
既に救急態勢は整い、医師達は持ち場につく。セナの心臓は止まっていた。
医師達は心臓マッサージと気管切開を施す。脳の損傷が取り返しのつかないものになるのを避けるため、呼吸を回復しなくてはならない。
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14時34分 |
最小限の生命維持活動を回復したセナは、チューブを通され蘇生装置につながれたのち、数分で、マッジオーレ病院へと彼を乗せヘリコプターはと飛び立った。
コンクリートの上には大きな血溜まりができ、離陸していくヘリコプターからも血が降る。
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14時45分 |
ヘリコプターが病院のヘリポートに着陸。
アイルトン・セナの身体は、特殊な金色の袋状のケースに包まれている。ストレッチャーは、マッジオーレ病院の最上階へと急ぐ。
そこには、それぞれ複数の蘇生科医・X線専門医外科医・そしてベッラリア病院から加わった脳外科の専門医が待機していた。
ヘリコプターに同乗してきた医師達と待機していた医師達との素早い意見の交換で、この惨事についての見解が出された、医師たちの顔は緊迫し、彼らに視線はポータブル蘇生装置のインジケーターから動かない。
セナの脈は再び打ち始めていたが、鼓動は極めてかすかであった。
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15時15分 |
マリア・テレサ・フィアンドリ女医が最初の公式コミュニケを発表した。
「セナの症状は極めて重体です。事故直後に施された気管切開で、最初の難関は越えましたが。
とはいっても、状況は以前絶望的です。今からCT検査が行われますが、その結果、もっとはっきりしたことがわかるはずです」と。
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16時30分 |
医師団は全員そろってプレスルームに降り、フィアンドリ女医が一番最初に話しなじめる。
「脳が極めてむごい損傷を受けています。前頭部の陥没と、頭蓋骨の複雑骨折が認められます。
脳波は現在検査中です。
この結果がどうあっても、予断を許さない、見通しを、さらに決定的なものにすると思います」外科医フランコ・バルドーニが「私たちは胸部と、腹部の手術をしなくてはなりませんでした。
また浅側頭動脈の出血を止める必要がありました。その部分は数分で解決しましたが、脳にはまだ重大な問題が残っています」
X線科医長サンドロ・サルトーニは「臨床像は頭蓋骨の複雑骨折のために、悲劇的なものとなっています。脳の損傷は非常に大きい。奇跡は期待できません」
ベッラリア病院の脳外科医アルバート・アンドレオーリは「差し当たって、脳に外科的な手術をする必要はありません。
CTスキャンで骨折があることは確認されましたが、取り除かなければならない血腫や、内部溢出は認められていません。それらが認められる場合には、外科的な排出によって症状の改善が期待されるのですが、現在、この可能性はありません」
蘇生科ジョバンニ・ゴルディーニ博士は「セナの心臓の機能停止期間は長かったのですが心筋は事故数分後を経過した後に、熱心に行われた医学的処置へ反応する形でのみ、鼓動を再開しました。現在、脳の損傷は回復不可能であると考えられます」
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18時00分 |
フィアンドリ女医が再びプレスルームに姿を現す。
「脳波はフラットです。セナは臨床的に死亡しました」
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18時40分 |
蘇生科の医長は、最後の恐るべき宣告を行った。
「アイルトンセナは、生きることをやめました」
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アイルトン・セナ・ダ・シルバ
1960年3月21日 ブラジル、サンパウロ生まれ。
享年34歳。
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