やぁ平和なみんな、元気かな?
 今日も今日とてヴィラで生きるか死ぬかの内戦巻き込まれ中☆ まっさかりなミニちゃんだよー。
 うん、正直「あーこれ詰んだ。死ぬ」って思ったんだけどね。人間って意外としぶとく頑丈にできてるものだね。
 あれからけっこう経ったんだけど未だにたくましく生きてるよ。死んでないよ。
 誰か親切な人が助けてくれるとか、そんな夢と希望に溢れた素敵な展開も無かったけどね!

 なにせミニ、カモネギが準備万端で鍋に入った状況な事はばっちり理解してるんだもの。
 まわりみんな敵にしか思えないもの。
 死体から泥棒してる人とか身内必死に探してる人とか戦ってる人とか色々いたけどね、みんな疑わしいっていうかすぐミニを海軍に売りそうっていうかそもそもこんな過酷な状況下で手に入った無抵抗のカネヅルなんて見捨てるしか選択肢存在してなさそうっていうか。
 現状でミニが人を信じるって、ぶっちゃけかなりのハイリスクローリターンだと思うんだ。
 海軍行って拷問死フラグ成立するくらいなら、足掻いた挙句の野垂れ死にの方がはるかにマシだと思うんだよね。
 捕まって海軍とか天竜人いい気分にさせるくらいならミニ海に身投げする。
 あいつらの得になる行動だけはしたくない。
 海軍は屈辱的で殺意に満ち溢れてとめどなく不幸になればいいしむしろお前らみんな胃に穴があいて慢性化するレベルのストレスに苛まれればいーのにな☆ と思う本心をコンクリ詰めして壁が十メートル幅ある鉄の箱に入れて溶接した挙句太陽に放り込むレベルで譲歩してやったとしても、天竜人だけは嫌。
 末代祟って産まれてきた事を後悔させる勢いで非業の死を遂げさせても絶ッッッ対! に嫌。
 浚われ売られたのは環境が悪かったとかそんなスキがあったミニが悪いとか、まぁミニ個人の責任を一割程度は認めてもいいんだけど、現状他人が信用できないデンジャーな生活は天竜人が全面的に悪いんだし。誰がすき好んで異臭のするドブ水飲んだり、とてもひとさまには言えないどーぶつ様の腐肉などなどを喰って生き延びる生活してると。

 死体の間で息を潜めるのも、人目を避けながら力の入らない足で歩き回るのにも慣れた。
 海楼石にだって、毎日必死で足掻いた結果、ある程度は付けたままでも動き回れるようになった。

 だけど。

 でも。



(  どうして、私が  )

【 08.生きるだけなら簡単。ただし色んな尊厳は全力投棄の不等価交換。】


 刃物と鈍器が多いのは良い事だと思う。
 もちろん鎖が削れる的な意味で。海楼石慣れしてきたとは言え、あんまり力が入らないには変わりないから上手くはいかないけど、うん。こつこつ地道に執拗に削り続けていけば解放される日も近いはず。
 作業が地道すぎてたまーに全部投げ出したくなるけどね。
 命かかってても単調作業は飽きるね! いますぐ不思議なパワーに目覚めて鎖がぱーんってならないものか。無理かな。無理だよね。頑張ってもできないものはできない訳だし。
 いや待て、ミニは肉体こそメイドインわんぴーす世界☆ だけど、精神は前世現代産。
 うまくすれば念能力とか超能力とかチャクラとかイノセンスとか、そんなパワーに目覚める事も不可能でないかもしれないのでは!?
 うんうんあるよきっとある。信じれば夢は叶うんだよ……!
 人間の想像できる事はすべて起こり得る現実であるってシェイクスピア先生も言ってた。
 だからミニだって、バトル漫画特有の理屈じゃ説明できないパワーに目覚める事ができるはず。
 悪魔の実なんてものがあるんだからきっとできると思うんだ。
 実際問題、最近“気配”ってホントに感じ取れるものなんだなーって実感してるし。
 いや本当。昔は気配とか視線とか、それただの錯覚でしょって思ってたんだけど、あれって本当に肌と感覚で“分かる”ものだったよ。調子いい時と調子悪い時で 精度に差がありまくりだけど。
 調子がめちゃくちゃいい時だと、誰が何しようとしてるのかまでなんとなーく分るんだよね。先読みすごい。
 その節はどうもお世話になりました。そこまで調子良かったのは一回だけしかなかったけども。

 ……あのね? 実はミニ、三回くらい拾われた事があったんだよね。全部逃げ切ったけど。

 いちばん色んな危機を感じたのは一回目の時だったよ。うん、あの時がいちばんやばかった。
 見た目は優しげだったけどね、夜中によく寝たフリしてるミニとか他の子供のこと見下ろしてじーっと凝視してる変態さんでした。視線が粘着質ですさまじく気色悪かったです。
 予想だけど、あれは多分昔にミニを浚った人買いの同類だったんだろうと思うの。
 あのおじさんが商品狩り集めて保管するのが担当かな、ただし商品にも手をつける系なロリショタのペド野郎。
 よかったミニの貞操は無事で。初日からアレな声が聞こえた時には人生のラッキー時期って永遠に来ないんじゃないかなって気分になったし。たぶん上半身ぐるっぐるに巻いてる鎖がなかったら危なかった。
 がちがちに錠で固めてあるしね!あの時ばかりは鎖に感謝したよ本当。
 他の拾われっ子には馬鹿にされたり哀れまれたり八つ当たりの的にされたり何したんだお前って勘ぐられたりしたけど。みなさま大変にお荒みになったちびっ子どもでした、戦時中のお子様はスレまくりの模様です……ミニも生国は戦時中だったから同類といえば同類なのかな?
 イルキムはもう無いしミニ前世記憶ばっちりだし他の子みんな死んだか逃げたからどうでもいいけど。

「うー……。これ、よめない……」

 新聞に血痕べったりだよ。こんなところまで飛ぶものなんだねぇ血って。ミニちゃん一つ賢くなりましたー。わぁい。
 たぶんあれは内輪もめか何かだと思うんだけどね。連日怒声と言い争う声→ある日とうとう銃声が! のコンボだったし。隠れ場所に開きっぱなしのドアの後ろをセレクトしたミニは大変賢かったと思う件。
 いやだってベッドもクローゼットも無かったしミニの腕って背中で絡め取られててほとんど動かせないし、そもそも当時のミニって這って動くのが精一杯だったし。
 ハハハ、開けっぱなしなドアの後ろに人がいるとは思うまい!
 他の子? 逃げたよ、蜘蛛の子を散らすかの如くだったよ。
 遠くに去っていく気配がひとつふたつと消えていくさまはめちゃくちゃホラーでした。そして誰もいなくなった的な。
 自分以外動くものがなくなってもしばらく動けなかったなぁ。はち合わせたら最悪だもの。
 漏れ聞こえてた会話聞く限りではミニの事知ってたみたいだったし、ね。

 そんな経緯で元・人浚いの人間保管場所も今では立派な廃墟兼ミニの寝床ですありがとうございます。
 申し訳程度に残った布とかその他諸々は大事に活用させて頂いております。情報は特にありがたいです本当。
 それにしても大海賊時代とは良く言ったものだと心底思うの、なにこのカオス。

「知らない名前がいっぱいー」

 群雄割拠っていうよりは玉石混合なんじゃないかな、これって。
 海賊時代もまだまだ幕開けから年数経ってないしね。まだまだ「とりあえず乗り遅れるな参加しようぜ!」の精神の人はいっぱいいるって事なんだろうけど。なんて短絡的な。
 ああでも、ぽつぽつマンガで知ってる名前も混じってるや。
 “白ひげ”は既に大将格の貫録でしょー、でも“シャーロット・リンリン”は知らないなぁ。名前売れてるみたいだけどマンガで見た記憶無いし、今後消える人なのかな? あ、こっちの“ドンキホーテ・ドフラミンゴ”に“バーソロミュー・くま”って原作の七武海じゃん。
 この人達ってこの頃にはもう名を上げてたんだー。へーへーへー。
 元・海賊王のクルー組が見る限り名前出てないんだけど、いったい何してるんだろ。
 “道化のバギー”は原作来るまで東の海でいちびってるからどーでもいいとしても、“赤髪のシャンクス”は四皇にまでなる訳だし、新聞載っててもいい気がするんだけどなぁ。
 あれかな、どっちかっていうと冒険メインの海賊だし……まだ他の海でわくどきの冒険でもしてるって事かな?
 原作見る限りでは凶悪犯罪起こしたりってタイプでも無いだろうし、あの人達。

「あ、ニコ・ロビンの手配書」

 という事は、オハラはもう無いのか。なんという異端狩り。
 オハラって確か学問で有名な国だったって話だし、知識欲旺盛な人間が世界政府にとって都合の悪い歴史に辿り着く事くらいは予測してても良かったんじゃないかと思うんだけども。
 せっかくの有能な人材を国ごと灰にとかそれなんて正義。
 早い段階からその件すら織り込み済みだったって可能性もあるけど。主に見せしめ的な意図で。

 まぁ、何を推察したところで結局は未来への投資を兼ねた暇潰しにしかならないけど。
 行動を共にするような仲間もいないし、おじさん達はリトルガーデンできっと今でも決闘してるんだろうし、力が欲しくても修行とかやり方分からないしそもそも鎖外さないと同年代以下っていう。

 会話相手がいない辺り、海王類の腹にいた頃を思い出すけど寂しくはない。
 他人が信用できないからには選択肢はそれしかないし、逃げ隠れし続けるのも別にいい。
 だけど、なんでだろうね。たまに心臓の辺りが重くなるんだ。

「……はやく、あいたいな」

 おかあさん。
 わたし、がんばってるよ。




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