苦節時間経過不明の長期間!
暗闇で食事も満足に取れず、人間形態だともれなく消化されるので泥モードで漫然と漂う日々がようやく終了。
孤独すぎて今生について考え続けたり一人でネタ遊び続けたり幸せについて本気出して考えてみたりもうここらで人生終了した方が幸せかもね? とか考える、そんな痛苦しい人みたいな鬱展開からも抜け出せたよ、やったね☆
ああうん、どうして出られたのかって?
わたしを食べた海王類が、フィッシングされたからだよ。
……うん、その時はさすがに呆然としたね。
最初はジャンプしただけかなーって思ったんだ、胃の中でも浮遊感は感じるからさ。たまにあったしね。
でも気が付いたら空が見えたんだよ光と共に。胃酸と一緒に外へ放り出された瞬間の驚愕ったら無かったよ。
まぁ泥だから着地に問題は無かったけどね。泥だし。
でもね、出た島も良かったのか悪かったのか微妙なんだ。
密林なんだ。
恐竜が闊歩してるんだよ。
そして巨人な先住民が約二名ほどいらっしゃるんだよね。
ていうか、わたし食べてた海王類フィッシングしたの巨人だったみたいだしね!
どう考えてもリトルガーデンなんだけど、ここって幼女的に環境苛酷なんじゃないかと思う次第。
……どうして、まともな島に出られないのかなー。
【 04.何処だって住めば都である。ただし野生のと冒頭に付く罠。】
結論から言えば、生きるのにそこまで苦労は無かった。泥だけに。泥だけに。必要な事なので二回言った。
だってわたしってば泥なんだもの。生存競争から余裕で逃れ得るポジションの物体なんだもの。
泥状態で居続けると草が生えてくるんだけども肉食獣達からは余裕でそっぽ向かれるという。
悪魔の実の能力者は人間外カテゴリの模様です。いやまぁ泥になったり雷になったり炎になったりゴムになったりバラバラになったりする生物は人間じゃないとわたしも思うんだけども。もう悪魔カテゴリで良くね? あ、でも悪魔の実を食べた=悪魔に力を授けられた、って解釈すれば魔女とか魔法使いとかそんな感じの存在になるか。
つまり、今のわたしは正しく。
「らぶりーぷりてぃー☆魔女っ子ミニちゃん!」
……馬鹿な! 悪ノリのつもりだったのにあまりにも心に痛いッ!?
このネタはもうしない。絶対にしない、なんというダメージ。
精神年齢が余裕で二十歳を超え、あまつさえ色々口する事を憚られる奴隷的羞恥プレイで鍛えられているはずのわたしが瀕死に値するダメージ数! 黒歴史参入がこの瞬間に確定した!
けれど素で心が折れるわたしに、運命は際限なくどこまでも残酷でした。転生してからずっとだがな。
「ミニよ、今のは何の遊びなんだ?」
「ガババババ!
いいじゃねえかドリー、ミニが楽しそうなんだ! こうかミニ! “らぶりーぷりてぃー☆魔女っ子ミニちゃん!”」
「いやブロギー、そうじゃねェ。“らぶりーぷりてぃー☆魔女っ子ミニちゃん!”こうだろ、ミニ!」
い っ そ 殺 せ 。
なんで見てんの巨人二人! しかも真似るな動きまで! 綺麗な花畑と川の向こう岸で過去のわたしが微妙な顔してるのが見えたよどういう幻影?! 致死ダメージ超えたからね!?! いかついおじさん達がやってもおぞましいだけだよ!
………こほん。
海王類の腹から出て、彼等と交流するようになったのはだいたい三ヵ月くらい経過してからだった。いや原作知ってるから気の良い人達だって分かってるんだけど何故かみょーに怖くて怖くて。やっぱりサイズの違いだろうか。
ともあれ、交流するようになってみれば彼等はやっぱり、とてつもなく良い巨人達だった。
わたしの境遇話をすれば、二人して全力で号泣し(溺れ死にしかけた。地上なのにね!)
食事時になればあれ食えこれ食えと肉を文字通り山ほどくれ(そんなに食べれないと説得するのに半日かかった)
強くなりたいと言えば真剣に付き合ってくれ(だが内実はとてもアバウトだった。ドリーおじさん、貴方は理論派だと信じてたのに……)
……うん。二人とも、とてもよくしてくれる。実害はともあれ。
決着がついた暁には、エルバフへ一緒に行こうとも言ってくれた。いずれは北の海へ戻ってお母さんに会いたいと告白したら付き合ってやろうとまで言ってくれて、不覚にもマジ泣きしてしまった。
優しさってこうまで心に響くものだったのか……ていうか転生して以降、こうまで優しくされたのってお母さん以来じゃ……やばい思い出したら泣けてきた。
「ど、どうしたミニ!ど こか痛ェのか!?」
「悪いモンでも食ったかミニ?!」
ブロギーおじさんのセリフに引っかかる部分はあったが、それを首を振って否定して、おろおろしながらも涙を拭おうとしてくれる二人の指先に抱きつき、安心させるように心から笑った。
「ミニは大丈夫。ドリーおじさん、ブロギーおじさん、だーいすき!」
“チビ人間”の中でも特別小さいから“ミニ”。
前世の名前も、今世の名前さえ忘れ果てた天竜人の元奴隷に、二人がくれた新しい名前。
単純なネーミングだと、自分でも思う。その点はまったくもって否定しない。
だけど今のわたしにとってこの名前は、二度と忘れたりしないよう一人称代わりに使うくらいに大事な名前だ。
なのでわたし、ミニはここに誓っておく。
一人称が名前呼び&ミニという名が相応しい、小悪魔ふわふわスイーツ系女子(外見限定)になる事をッ!
中身? いやこの年で路線変更はダメージ大きすぎるからね。確実に精神ダメージで死ねるからね。
とりあえず、この島に来て死んでった海賊とか旅人の服をソッチ系な服へ改造する事から始めていこうと思うよ。
名前の件が馬鹿にされたらわたし、その相手にマッドショットしないでいられる自信無いしね。
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