まずはそう、見渡す限りの素材が欲しい。

意図すれば瞬間に、一面が渾然としたもので満たされた。
溢れてあふれて零れ落ちる。
留まるところを知らない。


・・・・あれ、おかしいな。容量多くない?
そういえば限度決めてないっけ。それでか。


道理で、と沈んだり浮かんだりを繰り返しながら頷いて、まぁいいかと思う。手元にあるなら楽だ。
まずは・・・・・器。器が欲しい。
作るものはどうせなら徹底して凝ってみたい、それなら土台はあるべきだ。
イメージの中で、どんな形の器にするかをシミュレートしてみる。


ひらべったい形。

四角形。

円錐。

三角錐。

メビウス型。


うん、駄目だ問題多すぎ。

ここはやっぱり、形は丸―――球体型にしよう。
端の処理を考えなくても済む。素人も玄人も使えて一般的。
素材、素材は・・・・・・・・どうしよう?
見回さなくても、すぐそばにはたくさんの渾然としたものがあるけど。
要素を取り出して、固形化すれば使えるかな。たぶん。
冷たい部分を取り出して、固めて固めて固めてぎっちり固めてほら、できあがり!
でも困った。こんなに冷たく硬いのは使えない。

うん、作ってから言うのもなんだとは思うんだけどさぁ・・・・・イメージとなんか違うってゆうかね。
もっとこう、いじりやすいのがいいんだよね。どうせ土台にするならさ。
素材選びを間違った、なぁ・・・・・・・

できたばかりの凍えたまるいのをそのへんに放り出して考える。
冷たいのが駄目なら熱いものならどうだろう?うまくいきそうな気がする。
外側の渾然から、熱いのををかき集める。
イメージ付けしないと固形化しにくい。どうしよう。
ああ、さっき作った冷たい塊の逆にしてみようか。ゆらゆら揺れる、でも実体のあるもの。
そうだ、そうしよう。分かりやすく色もつけちゃえー♪
くるりと丸めて密度を極限まで上げまくってっと。

うん、我ながらいい感じにできた――――ってしまったぁ!
つかえないじゃん、こんな熱いの!?
しかもいまいち不安定だよ当たり前だよゆらゆらだもん土台にならないよぉおおおお!!!

いっぱい固めてみるけれど、どうにもゆらゆらうねうね動く。
設定付け、間違えたかなぁ。・・・・・・・かなぁじゃないね間違えてるね。
こっちもぽいっと放り出して、今度は何を使うか考える。
冷たいのも熱いのも駄目。不安定なのも駄目。最初から固形のもの、使えばいいのかな?

渾然としたものから、固形のものを取り出して、性質ごとにばらばらにする。
柔らかいもの、つるつるのもの、でこぼこしたもの、ぬめぬめしたもの、硬いもの、するするのもの。

さっきの失敗を踏まえて、今度は小さい塊を作って試してみる。
なのに出来上がるのは、どれもこれもいまいち納得がいかないものばっかりだ。
やになってきた。ゆらゆらと渾然としたものたちに沈みながら、周りを浮き沈みする失敗作を眺める。
特に冷たいのと熱いのが強烈。ぼけーとしながら、渾然の中でゆらゆらして。


混ぜたらどうなるんだろう。


ふと思いついた。そうだ、混ぜるってどうだろう?
渾然の中から使えそうなもの色々かき集めて混ぜて練って丸く土台に固め直す!
いやいっそ、渾然とした材料自体を丸めてみようか。
密度を上げて形を整える。いらないものは削ればいい。
ひらめいた考えに楽しくなってきて、今度は渾然としたもの自体を掻き集めた。
ぎゅうぎゅうとまぁるくなるように固めて固めて。
あ、いいかんじ。

力を加えているとだんだん性質ごとに集まって、自然と形ができてきた。
固体と液体の性質はまんなかの方で混ざりながらまとまって、ゆらゆらしたりする気体は丸く作った形の外側の方でゆらゆらと揺れている。


うん、我ながらいい出来栄え!




†   †   †



創造主は混沌たるものらに、世界を形作る事を命じられた。

混沌たるものらはおのおの思う形を取ったが、創造主の御心に叶うものは無かった。

故に創造主は御身自ら、混沌たるものらより世界を形作られたのである。

かくして混沌たるものらは選り分けられ、天と地が生まれた。

第二日目、界狭日の事である。








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