「創世記のノアの箱舟」=旧約聖書(創世記第六章〜第九章)

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(一)

(ヤハウェ)は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計(はか)

っているのを見て、地上に人を造ったことを後悔し、心を痛めた。神は言った。「

わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這

(は)うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する」しかし、ノア

は神の好意を得た。その時代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった。ノアは

神と共に歩んだ。ノアには三人の息子、セム、ハム、ヤフェトが生まれた。この地

は神の前に堕落し、不法に満ちていた。それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で

堕落の道を歩んでいた。神はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時

がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地

もろとも彼らを滅(ほろ)ぼす。あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟

には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。次のようにして

それを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマ

にし、箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱

舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。見よ、わ

たしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼ

す。地上のすべてのものは息絶える。わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻

子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。また、すべて命あるもの、すべて肉なるもの

から、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それ

らは、雄と雌でなければならない。それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地

を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。更に

、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食糧としなさい」

ノアは、すべて神が命じられたとおりに果たした。神はノアに言われた。「さあ、

あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわた

しに従う人だと、わたしは認めている。あなたは清い動物をすべて七つがいずつ取

り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい。 空の鳥も七つがい取

りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 七日の後、わたしは四十日、四

十夜、地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去る

ことにした」ノアは、すべて神が命じられたとおりにした。

(参考)

@地上に人を造ったことを後悔・・・この時代、人は神(ヤハウェ)から離れ、つ

まりサタンに近づいた。そして神が祝福した子孫繁栄によって、人が増えると同時

に堕落と不法も全地にひろがってしまった。

Aゴフェル・・・硬質に木。

Bアンマ・・・中指の先から肘までの長さで、約44.5cm。全長300アンマは、13

m超。幅は50アンマ、22メートル、高さは30アンマ、13メートル。これ

は今日の大型客船に匹敵する巨大な舟だった。

 

(二)

ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。ノアは妻子

や嫁たちと共に洪水を免(まぬが)れようと箱舟に入った。清い動物も清くない動

物も、鳥も地を這うものもすべて、二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは神が

ノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。七日が過ぎて、洪水が地上に起こっ

た。ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がこと

ごとく裂け、天の窓が開かれた。雨が四十日、四十夜、地上に降り続いたが、まさ

にこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁

たちも、箱舟に入った。彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地

を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、命の霊をもつ肉なるもの

は、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。神が命じられたとおりに、すべて肉

なるものの雄と雌とが来た。神は、ノアの後ろで戸を閉ざした。洪水は四十日間地

上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。

水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。水はますます

勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆(おお)われ

た。水は勢いを増して更にその上、十五アンマに達し、山々を覆った。地上で動い

ていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごと

く息絶えた。 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものは

ことごとく死んだ。地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、

空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共

に箱舟にいたものだけが残った。水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。

(参考)

@ノアが六百歳・・・人は900歳は当たり前だったが、命の起源である神から人が

離れるのに従って、だんだん短命になっていった。

A彼らは大地からぬぐい去られ・・・ノアの家族以外は洪水で皆ほろびてしまった

から、全民族、全人類はノアの子孫である。

 

(三)

神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心(みこころ)に

留め、地の上に風を吹かせたので、水が減り始めた。また、深淵の源と天の窓が閉

じられたので、天からの雨は降りやみ、水は地上からひいて行った。百五十日の後

には水が減って、第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。水はます

ます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂(いただき)が現れた。

四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏(からす)を放した。烏は

飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。ノアは鳩を彼の

もとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。しかし、鳩

は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全

地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分の

もとに戻した。更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。鳩は夕方になって

ノアのもとに帰って来た。見よ、鳩は嘴(くちばし)にオリーブの葉をくわえてい

た。ノアは水が地上からひいたことを知った。彼は更に七日待って、鳩を放した。

鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。ノアが六百一歳のとき、最初の月の一

日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は

乾いていた。第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。

(参考)

アララト山・・・標高5000m級の山といわれている。

 

(四)

神はノアに言った。「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟か

ら出なさい。すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も

家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群(むら)がり、地上で子を産み、増

えるようにしなさい。」そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。獣、這うも

の、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。ノアは神のために祭壇を

築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす献げ物とし

て祭壇の上にささげた。神は宥(なだ)めの香りをかいで、御心に言った。「人に

対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いの

だ。わたしは、この度(たび)したように生き物をことごとく打つことは、二度と

すまい。地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも、寒さも暑さも、夏も冬も、昼も夜

も、やむことはない。」神はノアと彼の息子たちを祝福して言った。「産めよ、増

えよ、地に満ちよ。地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと

海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだね

られる。動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたし

はこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。ただし、肉は命

である血を含んだまま食べてはならない。また、あなたたちの命である血が流され

た場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血に

ついては、人間から人間の命を賠償として要求する。人の血を流す者は、人によっ

て自分の血を流される。人は神にかたどって造られたからだ。あなたたちは産めよ

、増えよ、地に群がり、地に増えよ」

(参考)

宥めの香り・・・雄羊を焼く時に生じる「香(こう)ばしい香り」。

 

(五)

神はノアと彼の息子たちに言った。「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子

孫と、契約を立てる。あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共

にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地

のすべての獣と契約を立てる。わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と

洪水によって肉なるものがことごとく滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を

滅ぼすことも決してない」更に神は言った。「あなたたちならびにあなたたちと共

にいるすべての生き物と、代々とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれであ

る。すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立

てた契約のしるしとなる。 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現

れると、わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるも

のとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼ

すことは決してない。雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のす

べての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心を留める」神はノ

アに言った。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間に立てた契約のし

るしである」 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハム

はカナンの父である。 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広

がったのである。

(参考)

契約を立てた・・・神(ヤハウェ)が二度と人間を滅ぼさないというのではなく、

「洪水で滅ぼすことはしない」という契約である。

 

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さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで

酔い、天幕の中で裸になっていた。カナンの父ハムは、自分の父(ノア)の裸を見

て、外にいた二人の兄弟に告げた。セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に

掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆(おお)った。二人は顔を背(そむ)け

たままで、父の裸を見なかった。ノアは酔いからさめると、末の息子(ハム)がし

たことを知り、こう言った。「カナンは呪われよ 彼はしもべの下僕(しもべ)と

なって、その兄弟たちに仕える」また言った。「セムの神、主はほほえむべきかな、

カナンはそのしもべとなれ。神はヤフェトを大いならしめ、セムの天幕に彼を住ま

わせられるように。カナンはそのしもべとなれ」ノアは、洪水の後、三百五十年生

きた。ノアは九百五十歳になって死んだ。

(参考)

カナンは呪われよ・・・ノアは、ハムとハムの息子カナンに怒りをむけた。カナン

の子孫であるカナン人は、このあとの歴史において堕落していき、多神教に走って

行く。そのきざしを知ってノアは怒ったという。ノアの長男のセムの子孫がイスラ

エルの民として、聖書の当事者になり、ヤフェトの子孫は、ゴメルとかマゴクとか

遠くの北方民族の元になった。