どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして、
アイ。
なんで動かないのどうしたのどうしてだよ帰るよって言ったじゃん
(すぐにサイは彼女の死を把握できた訳では無い飛行機の残骸の中で燃えていく彼女を見ながらも尚信じられない自分がそこにいた)(だってまだ残っているのだ、いつもの感情の起伏に乏しいけれど優しい彼女の声が)
聞こえなかったんじゃないだろねぇ起きてよ二人で帰ろうよ
(すぐさっきまで動いていた返事をしてくれたそこにいた)(ああ、まるで影のように共に寄り添い続けていたサイは彼女を殺すことは無かったし彼女もサイの傍で居場所で有り続けた)(別れなど無いサイはサイが望み続ける限り彼女が自分の傍を離れはしないと知っていた)
音がするんだ雑音がなにかいうんだすごく五月蝿いんだよあい、ほんとうるさいよねあいもうるさいでしょほら起きてよ唐揚げだって作ってくれるんじゃなかったの
(雑音をサイは認識していた、現実を冷静に把握する部分が確かにあった)(けれどそれとはまた別に認識を拒む部分も存在するのだ)(初めて見る男もその言う事もサイの望み続けた答えだったけれど)(それよりもっと重要な。そう、サイにとって最も重要な事はそれでは無かった)
起きてよあい、おれのなかみしりたいっていってたじゃないか
みるんでしょおれのなかみねぇ、それまでずっといっしょにいてくれるんじゃないのうそつくなんてゆるさないよ
(アイは動かない、かつて“飛行機落としのイミナ”と呼ばれた女性は皮肉にも堕ちたヘリの中静かに灰燼へと帰そうとしている)(サイと出会って葬った過去、置き去りにした名に相応しい末路)(刻んだ墓碑銘が彼女を呼んでいたとでも云うのだろうか)
なにもかもがうるさいんだわけわかんない、あいのこえがきこえないじゃないか
(サイに出会ってイミナはアイになった)(アイを得て不明瞭な自己しか持たぬ哀れな実験動物はサイになった)(サイは過去に捕まって)(同じくアイも過去の亡霊に捕まった)(運命と呼ぶには些か滑稽ですらある)(つまりは逃れられなかったという、ただそれだけの事だろう)(一言で終わらせるには苦い現実だった)
あい、おきて
おれといっしょにかえろうよ、おなかすいてるんだ
はやくからあげたべたいなあ、
静 寂 の 果 て
なかみなんてみせてくれなくていい
ねぇ、おれのことよんで
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(待つのは現実)(もう還らない。)