ふわり、ふわり、



何色にも染まっていない色彩をてのひらに乗せて、漆黒を纏う少女は空を見上げた。
しんしんと白が舞う深い藍色の天上は、宝石を散りばめたように煌めいている。
けれど少女は、そんな美しい光景にも視線を留めない。
何かを、誰かを探すようにしてじっと夜空を見上げながら、一人、銀の髪をなびかせて佇んでいた。


毅然と立つ、凛とした背中。


ただ立ち尽くしているだけだというのに、少女は容姿の儚さとは無縁の存在感を誇示して在る。
力強く、しかしか細い少女の背を、彼はそっと己の腕で包み込んだ。

「っ!」

ピクン、と少女の身体が跳ねた。
即座に放たれた肘鉄を避ける事もなく身体で受け止め、彼は少女の耳元へ囁く。

「手荒い歓迎だ。誰かお探しかな、お嬢さん?」

「ワタル…………」

驚いたように目を見張り、少女――――は、繊細な美貌のかんばせを苦笑で彩る。
普段なら、ここで連撃を加えて距離を置いただろう。
けれどは意外なほどにおとなしく、ワタルの腕の中に甘んじた。

「素直だな。いつもの、愛のコミュニケーションは無しでいいのか?」

「あはは、ばぁーか。あたしにだって、こういう気分の時はあるんだよ」

トン、とワタルの胸に額を押しつけ、はくすくすと小さく笑い声を上げる。

「まったく。会いたいと思ってる時に会いにくるなんて……ワタル、あたしの心が読めるんじゃない?」

「愛する者の気持ちを読み取る事ぐらい、このワタルには容易い事だ」

「んふふ。そっか、そだね。クリスマスだもんね」

静かな雪原の中、二人は身を寄せ合ってぬくもりを分かち合う。
穏やかな時間。まるで、いつもの光景が嘘のように。
寒さにか、それとも照れか。
ほんのりと頬を薔薇色に染めて目尻を下げ、はワタルをそっと見上げる。

「クリスマスプレゼント……用意してなかったなぁ」

「気にする必要なんてない。ここに、あるだろう………?」

ぷっくりと艶めいた唇を指先で辿れば、ん、と呟いては瞳を閉じる。
頬に手を添えて身を屈めれば、やがて二つの人影は重なりあい――――――――





「と、いう展開もありだと考えてな。
 さぁマイハニー照れずに濃密ホットアダルティークリスマスへとドラゴンダ〜イヴ!!


「てめぇ単独でダイヴして来い発禁野郎ぉおおおおおッ!!!!!」


食事優先して、長々妄想話を垂れ流させてやったのは失敗だった。
全身くまなく鳥肌立てて、は毎度おなじみの罵声と容赦の無いバイオレンスをワタルにくれてやった。






レの定義を問うて







その場に傷薬を捨てていったのは、あるいはクリスマスの奇跡だったのかも知れない。





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ある意味デレ。