邪説・白雪姫





昔々とある王国に、年齢差が著しい王夫妻がいました。
夫妻は結婚して何年も子供に恵まれず、それが二人の、というか王国全体の問題でもありました。
なんせ王様夫婦ですからね。後継者問題ありますからね。
下手すれば血で血を洗う権力闘争勃発です。

「子供が欲しいのう・・・・・とりあえず男でも女でもいいから」

そんな台詞さえ、オーキド王妃の口癖となっていました。
男でも女でも王位継承権のあるお国柄でしたので、どっちでも問題無いんですよね性別は。
てゆうか原作と台詞違いますよね黒髪白い肌赤い唇な美少女っ子望むシーンじゃねぇんですか王妃様。

「原作なんぞ知らん」

一言で切り捨てやがりました 原作無視かこのジジィ。
えー、ともあれ国中総出でありとあらゆる魔法魔術薬草邪法etcを試しまくった結果として、オーキド王妃は望み通りに妊娠・出産致しました。これにはクリスタル王も大喜びです。なにせ待ちかねた我が子なので。

「どうして男が出産できるのかしら・・・・・」

深刻に悩まんとファンタジーの一言で済ませてください王様。
でも子供を産むのと引き換えに、オーキド王妃は息を引き取りました。高齢出産でしたしね。
オーキド王妃が産んだ子は、落ち着いた茶の髪に鮮やかな翠の瞳の、それはそれは美しい男の子でした。
妻が死んでも疑問に唸る王様を尻目に、重臣達は待望されたこの子供に「白雪」と名付けました。

ザ・予定調和。

ちなみに愛称はグリーンです。目が緑だったのが理由です。安直ですねそうですね。
そんな感じで誕生したグリーン姫・・・・違った白雪姫は、途中でクリスタル王が後妻に迎えたブルー王妃ともそれなりに当たり障り無い仲を築き、日々ポケモン修行に明け暮れておりました。
しかしまぁ、そんな平穏な日々がいつまでも続くはずもありません。
実は魔女だったりするブルー王妃は、今日も今日とて魔法の鏡に向かって定番な問いかけを発していました。

「シルバー!世界で一番美しいのは誰かしら?」

「猟師の

即答です。

「でしょうね」

納得しちゃったよ王妃様!
しかもなんかその回答に満足気だし!?

「いいのよ、アタシのおねーさまだものっw」

「オレのだし・・・・・当然だ」

原作と違う言動は謹んで欲しいんですが―――って言っても無駄か。
せめてバトルは勃発させんで下さいそこ!所有権を争って睨み合うな頼むから本当!!

「チッ・・・・・作者風情が生意気な。
 まぁいいでしょ。シルバー、世界で2番目に美しいのは誰?」

「ねえさん」

「当然だわ」

「と、言いたい所だけど白雪姫らしい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 何ですってぇ?

ブルー王妃、ちょっとお子様にはお見せできない表情になりました。
手に持っていた扇子がべきゃことすげぇ音を立てて粉砕、破片にモデルチェンジ。
勢いよく叩かれた机も凹みましたよどんだけ力入れてんだアンタ。

「シルバー!アタシがあの男の癖に姫とか呼ばれてる女装野郎に負けてるって言うの!?」

それは話の都合上仕方なくの処置なんですが。

「残念だけど・・・・・台本上」

それは禁句だシルバー。

「許せない・・・・許せないわ!おねーさまに次ぐポジションはアタシのものなのに!

え、そこポイント?

「かくなる上は――――速やかにグリーンを抹殺するのみ・・・・・!」



とまぁそんな安直な成り行きで、ブルー王妃によるブルー王妃のための白雪姫暗殺計画が実行されました。
毒殺は基本中の基本として、修行中の事故に見せかけようとしてみたりとか闇に紛れて刺客を放ってみたりとかお得意の魔法で呪殺しようとしてみたりとか。
でも白雪姫もさるもので、そんな危険をことぐごとく回避していきます。余裕です。さすが武闘派。
回避されるごとにブルー王妃の手口も容赦無くなっていきますがそこはご愛嬌。
嫌な具合にドロついた義母子関係ですね。
ともあれそんな現状を憂慮していた猟師のとクリスタル王は、白雪姫を王国から逃がす事にしました。
ありがとう猟師さん、ありがとう王様。貴方達のおかげで原作筋に戻せそうですよ。
狩りに行くとみせかけて、は地元住民も足を踏み入れない樹海へと白雪姫を連れて行きました。
白雪姫は自分を逃がそうとしてくれた猟師の手を、感激に目を潤ませて握ります。

「一緒に逃げよう、

「違うだろが!!」

猟師の裏拳が白雪姫に炸裂しました。
白雪姫は無言で脂汗を流しながらも、猟師から手を離しません。いい根性だ。

「ブルー王妃は言いくるめとくから、ほとぼりが冷めるまで森の小人達の世話になってろつってんだろ!」

「ああ。だからオレと一緒に来てくれ」

真顔で真剣そのもの、といった声音で告げる白雪姫。
美形なので絵になりそうではありますが、女装姿なのでときめきは発生しようがありません。
実際、猟師の返事は非情でした。

「一人で行け。台本通り森行って毒リンゴ食ってレッド王子にちゅーされて来い!


レッド×グリーンらしいです。


実は猟師の目当てはそれらしいですよ腐ってますね。
しょせんは腐女子という事ですね、汚れちまったピュアハート。
皆さんはこんな乙女になってはいけません。せめて口には出さないように。
でも白雪姫もめげませんでした。

・・・・・・・」

「う゛ッ」

小首傾げて哀しげな眼差し+そっと袖を握って行かないでとアピール+儚い声と三連コンボ!
これにはレグリ目当てで小人達にビデオ渡してたりした猟師もぐらっときたようです。
目先のグリーン未来のレグリ。これぞ究極の2択。
てゆうか白雪姫キャラ違いませんか。計算ですかそうですか。
内心揺らぐ天秤を読み取って、白雪姫はそっと猟師の頬に手を添えて言いました。

「オレじゃ、嫌―――か?」

「イイエ喜んで駆け落ちさせて頂きますともよッ!!!」

目先の萌えに大きく天秤が傾いたようです。
白雪姫の手を握り返して超笑顔で言い切りました猟師。しょせん腐女子か。
最後の悩殺系憂い笑顔が効いたようです確実に計算ですよこの緑っ子。
なにせ猟師が頷いた瞬間ニヤリって笑いましたから。末恐ろしすぎて嫌になるな。



こうして白雪姫と猟師は手に手を取って駆け落ちし、怒り狂ったブルー王妃とか猟師LOVEな連中の追っ手をかいくぐってそれなりーに幸せ?な家庭を築いたのでした。

めでたしめでたし。





TOP

クジで全員キャスティング。運命を感じた。