系統別修行をしよう。−休息編−




力尽きて気絶した弟子を、リオはベッドまで運んでやった。
重い鎖帷子や手甲などだけは外してやって布団をかければ、少女のすぐそばに、毛玉のような生き物―――ソウルシャートの幼獣が、転がるようにしてちょこん、と納まる。ぺろりと主人の顔を舐めると、ミュウ、とリオに向かって一声鳴いた。
あまりお目にかからないような整った造作をあどけなく緩ませて、義理の娘であり、弟子である少女――――はぐっすりと眠っている。ちょっとした事では起きなさそうなその寝顔を見て、リオはくすりと笑みを零した。

「お前もお休み。明日も大変だからねぇ」

ミュ!

威勢良く、短く鳴いてアークという名の小さな獣は丸くなった。
月明かりに照らされる綺麗な横顔を眺めて、なかなか根性のある娘だ、とリオは胸の内で呟く。
素質はありそうな少女だと思っていた。
しかしそれを開花させる事ができるかどうかは、最終的には本人次第である事をリオはよく知っている。
事実、己の見込んだ弟子の半数は、厳しい修行についていけずにこの家を去った。
なのにこの娘は、時々逃げ出す事はあるものの―――それでも、一度だって心の底から修行を嫌がって逃げ出そうとした事は無い。
なんだかんだと泣き言を口にしながらも、確実に腕を上げていっている。
正直、リオ自身さえも意外なほどのスピードで。



「つくづく磨き甲斐のある弟子だよ、お前は」



意識のある時にはしないような、やさしい手つきでその頭を撫でる。
去り際、とアークに一言だけ囁いて、リオは部屋の扉を閉め、自室へと戻っていった。
穏やかなその言葉を、知っているのはアークだけ。






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おやすみなさい、また明日。