系統別修行をしよう。−具現化&操作系編−




ギギギギギギギギッ


骨の軋る音が脳髄を引っ掻き回すように響く。
両足に踏ん張りをきかせ、油断無く状況を把握しながらも薙刀による重力操作は解かない。
一瞬でも気を抜けば、やられる――――理屈でなく肌で感じる恐怖に、背筋を冷たい汗が流れていった。

「ほら、受け身ばかりじゃなく攻撃してごらん。そんな対応じゃ消耗するだけだ」

の頬が引き攣った。
何か言いたい事があるのだろうが、残念ながら彼女にそれだけの余裕は無い。
操作系及び具現化系の修行―――その内容は、両方を取り入れてあるの重力操りの薙刀 【ウィッチ・グラヴィティー】を使って師匠の腕に結ばれたリボンを奪う、というものだった。
この技を使用して以外の小細工、念の使用は一切禁止。
は特質系の念能力者である。バランスの悪い話だが、両隣の操作系及び具現化系は100パーセント使用できるくせに変化系や放出系、強化系はかなり苦手なのだ。
しかし、それだけに操作系と具現化系は楽勝と言えた。
まぁ、このスパルタ師匠の修行がそんな甘いはずも無かったのだが。

「――――ふッ!」


ギィンッ!


周で強化された木の小枝を、集中して研ぎ澄まされた念の刃が切り裂く。
途端にリオ師匠は小枝を持った手が重くなるのを感じる。の薙刀が振り下ろされ、



―――――ゴッ!!



予測もしなかったような場所から襲ってきた蹴りに、とっさに片腕を盾にした。
みしぃ、と嫌な音と衝撃が全身を駆け回り、は顔を歪めた。片手に握られた薙刀は、それだけが別の生き物であるかのように旋回してリオ師匠の胴を薙ぐ。しかし斬ったのは残像だけだった。トン、と軽い音がして薙刀に重みが加わる。

「甘いねぇ」

言うが早いか、聞くが早いか。
薙刀の周囲の重力が歪みは片手でそれを跳ね上げリボンに手を伸ばす。
触れ合う指。気が付けば空を舞っているのはの方だった。
地面に身体が触れると同時、跳ね起きて師匠の姿を探
薙刀の刃を後方に突き出した。
視界がブレる。

「カンだけに頼るんじゃないよ。このくらいならまだ充分捉えきれるはずだ」

そんな事を言われても、できないものはできないのだ。
は苦虫を噛み潰す。加減されているのはよく分かるのだが、それでもビシビシ指導が飛ぶのは戦い方が悪いのか、反応が悪いのか。
振り向きざまに薙刀を勢い良く振るう。
その刃の延長線上から飛ばされた念が、リオ師匠の服をわずかに裂いて。




「放出系は使うなと言ったはずだよ?」




しまった、やっちゃった。
師の靴底を最後に、の意識は完全にとんだ。






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ほぼ毎日あの世を拝みます。よく死ななかったな。