系統別修行をしよう。−放出系編−




は森の中を走っていた。
それはもう必死になって走っていた。
けれどあまり―――というか、ほとんどスピードは出なかった。
何故かと言えば、いつもの異様に重い鎖帷子やら手甲やらを着けているからだった。
重荷でしかないそれらを付けたままで通常通りに走り回れるほど、の筋肉は異常発達していない。

「無理無理無理ーッ!!!!!」

「逃げてても仕方が無いって言ったはずだがねぇ」

「無理だって!なにあのデカ熊ッ!?」

余裕綽々に真横を走る師匠を見もせずに返して、は必死に足を動かす。
後ろから追ってくるのは、通常の二倍はあろうかという巨大熊だ。
巨体に似合わぬ敏捷さで追いかけてきているのが何とも憎い。あきらかに本日のエサとして狙われている。

「ほら、あれを倒さないというまでたっても終わらないよ?」

「ああああああもう!」

ややヤケクソ気味には指先に念を集める。
練と凝を併用し、かなり強力にオーラを練り上げ、背後の熊に狙いを定めて。



「――――いっけぇー!」



ぱっこん。

放たれた念の塊は、悲しいかな、熊を怯ませる程度の威力しか発揮する事は無かった。
熊の足が止まったのを良い事に、その間には走って距離を稼ごうと試みる。
しかし、現実はに大して甘くは無かった。基本でそうだが。
ドスドスドスドスッと、重量のある音が先程までより早いテンポで周囲に響く。

「本格的に怒らせたみたいだねぇ」

「頑張ったのにー!!!!!」

悲痛に叫ぶ、やれやれと肩を竦めるリオ師匠。
結構うまくやれたと思ったのに、挑発しただけの結果だなんてむなしすぎる。

「ってゆうか師匠!これってホントに放出系の修行なんですか!?」

「おや、疑うのかい」

「なんか無駄に命の危険が迫ってるだけって気がすごくっ!」

放出した念弾で、熊を倒せなどと無茶もいいところだとは思う。
強化系ほどでは無いが、変化系とならんで放出系は苦手だというのに。

「何言ってんだい。
 危険と隣りあわせであれば集中力が増すし、あれだけあればしばらく肉には困らないだろう」

「食糧事情っ!?」

「ま、力尽きたら私がやるさ。安心して死にかけといで☆」

「嬉しくない―――ッ!!!!!」



の悲鳴じみた絶叫が、森に木霊した。






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結局熊はリオ師匠が倒しました。この後三回くらい熊退治が修行メニュー。