■ 感情−その名を知りはしないけれど−     ( IN Missing )





心から惹かれるのは、その存在だけ。



どこまでも少年であり少女である、中性的な容姿。
艶のある漆黒の髪は硬質的で、その瞳は冷然として、深く澄んでいる。


総てを“観察”し、暴き出す瞳だ。


時には煌めく琥珀に輝き、そして漆黒に沈む、ダークブラウンの双眸。
何処までも理知的で淡泊な癖に、優しい。

身に纏う雰囲気までも、清冽でいて、独特な―――――私の、大切な人。
君がこちらの人間になったなら、どれだけ幸せだろう!

それを想像するだけで、心が躍る。
凪の心に、何とも言えぬ至上の幸福。

綺麗で醜い君。
清濁併せ持った君はきっと……“同じ”になってくれる。


私と同じ、魔女に。


ああ、それとも…“魔女”でも“人間”でも無いモノになるのだろうか?
少なくとも、“出来損ない”にだけはならない。

だって、こんなにも強い彼女だから。


「…きっと、大丈夫」

口に出して、そう呟く。
不思議そうな顔で、前を歩く少女が振り返った。

「詠子?」

涼やかな声が、私の名を呼ぶ。
ただそれだけで―――――全身を満たす、甘い感覚。
ふわふわと、天にも昇る心地になる。

それに、微笑みで答えて。


「何でも無いよ?


名前で呼ぶなんて、君以外の“人間”にはしないんだよ?
きっと、知らないだろうけれど。



ねぇ、“賢者”さん。



この感情が、なんて呼ぶものかは知らないけれど。

大好きだよ。




――――――誰よりも、ね?






 ■ 挑戦−大人?警察?それがなんだっていうの。−     ( IN 踊る大捜査線 )



冷ややかな冷気が、大気を凍らせる。
室内のはずの場所だと言うのに、まるで其処だけが、極寒の僻地を思わせる冷たさ。

吸い込む空気までが、刺々しく感じるのは……まぁ、気の所為では無いだろう。


「つまり…釈放は、出来ないと?」


その面に在るのは、穏やかな微笑。
しかしそこから発せられるのは、紛れもない怒りで。

彼等曰く、“たかだか高校生”。

しかしその高校生風情に、歴戦の刑事が―――――明らかに、気押されている。

それも当然か、と声には出さずにそう呟く。
気押されるのも、呑まれるのも、それは至極当たり前なのだ。
何故なら彼女こそ、曲者揃いの清陵高校の女王なのだから。

「いいでしょう」

永遠にも似た沈黙の後、紡がれた言葉は氷の如くで。
其れを直に受けている連中に、ほんの少しだけ同情を感じた。

「貴方達に頼った事が、そもそもの間違いなのだもの」


あっさりと突き放し。

冷然と、彼等を見据える。
フレームの奥で、氷の炎を宿した瞳が細められて。

たじろぐように後退する彼等を、褪めた気分で見物する。
それと対峙する我らが女王が、毅然とした面持ちで、言い放つ。



「仲間の無実は―――――私達が証明します」



凛としたその姿は、まさしく威厳に満ちていて。
拍手を送りたくなったのは、私だけでは無いだろう。


身体を翻し、退出する女王陛下と仲間達。


最後に部屋を出る前に、立ち止まって振り返る。
僅かに、本当に僅かに口の端吊り上げて。


浮かべるのは、酷薄な微笑。




「女子高生、舐めないで下さいね?」




せいぜい頑張る事だね、湾岸警察署諸君。
ケンカ売った事、骨の髄まで後悔させてあげるから。




※展開メモ
・オリキャラ生徒会長の長屋 利月嬢。別名【清陵の女王】(笑)
さんとは部活の先輩後輩の仲。
・VS原作キャラで敵対。よろしいならば戦争だ。
・迷宮的には出口付近。よく似てるけど違うよ!世界が多いのでちょっと泣きたくなる。




 ■ 幽霊は眠らない−胎児は過去の夢を見るか?−     ( IN JOJO )



少しだけ気を抜くだけで、己でも分かるくらいに薄れる身体。
物には当然触れられず、ただむなしく通り抜けるだけ。
まるで立体映像や幻でも相手にしている気分になるが、残念な事にそうであるのは己の方だ。ため息をつく。

「面倒な話……」

人間にも触れられず、声を届ける事もできず。
何をしてもどんな反応も返らない。当然だ、存在しないのだから。
今回ほどに“自分”というものを不確かで曖昧な存在と認識した事は無かった。
いつだって絶望と希望の狭間で、必死に、がむしゃらに走り続けていたから存在自体疑いにかかる暇など無かった、と言った方がいいのだろうけど。またも出る、ため息。しかし、ただ成り行きを見守ってもいられない。
無駄は時に必要でもあると理解はしていたが、誰にも関われない状況下で費やす時間は無駄であるだけでなく無価値でさえある。犠牲は最小限に、そして行動は効率的にで物事は進めていきたい所なのだが。
とりあえず、血のルーツである為にか、ごく稀に”声“を届けられる事は既に実証済みだ。
しかし、それは相手が夢と現の狭間にいる時か、さもなくば身近に死が生じた時に限られる。
せめて必要な情報だけでも届けられれば、あの男よりはよほど有利に事が運べるのだけれども。
は空中で頬杖をつく。


「………もう少し、捻くれててもいいと思うんだけどなぁ」


ちょっと良い人すぎない?と、因縁の始点であるジョナサン・ジョースターの背中に、は一人で毒づいた。




※展開メモ
さんまさかの胎児トリップ。ジョジョ血統ですが一般人のとこもありだったやも知れぬ。
・生を得た瞬間から「スタンド使い」として目覚めてしまっていたから母体ガチ危機。
・スタンド「円環の輪」(ループリング)の「時間や空間を円形に繋げる事ができる」能力を活用して時間跳躍。
・したら次の世界でなくて過去行きました。あれ死亡カウント無し?
・因縁の始まりなご先祖ジョナサンとディオ発見。波紋パワーで現実に干渉できるようになりました。
・ディオとも面識あるといい。

「変わらぬな。貴様も」

「貴方が生きる限りは、残念ながら安心して黄泉路も辿れなくてね」

 白熱の舌戦で嫌味の応酬。周囲一帯ブリザード。
・因果ひっくり返そうと八面六臂の大奮闘。迷宮でも苦労した世界ベスト3入り確実である。




 ■ 奈落の傍観−みんな、おちればいい。−     ( IN 聖闘士星矢 )



堕ちた花に、は静かに視線を注いだ。
老いの兆候をその身に宿し、それでも尚、月下に冴え冴えと白い椿。
なんという品種だっただろうか――――――衰枯の醜悪さと栄盛の華麗さを同居させた侭に潰えた花を眺めて思い、素顔を覆う仮面を撫でる。装飾性に著しく欠ける素焼きのそれは、この地にあっては重要な意味を持つもの。


処女神アテナの御座所たる“聖域”
その剣となり盾となり、駒となる“聖闘士”


女である事を捨て、戦士たるを選んだ女聖闘士達にとって、素顔を見られる事はこの上ない屈辱とされていた。
聖闘士の頂点である黄金であっても末端の雑兵であっても、果ては候補生達さえ、女は一人の例外も無く仮面を被る。
この聖域で仮面を被らぬのはただ一人、聖域の主たるアテナのみ。

(・・・・素顔を見た相手を愛すか殺すかしろって掟はどうかと思うけどね)

恥をかかせた相手に責任を取らせる、というのは分からなくも無い心理だが、気に入らないけど自分より強い相手に見られたらどうするのだろうか。

そもそも、この程度の事で貴重な戦力を減らすというのは合理性に欠けると言える。
掟を守らなかった場合に対する罰則は特に設けられていないので、無かった事にするという反則な選択肢もあるが。
そんな、にとっては暇潰し以外の何でも無い事を考えながら、堕ちてしまった椿を拾い上げる。仄かに薫る芳香に微かに口元を緩ませて、雑兵の自分では立ち入る事さえ叶わない場所へと視線を向けた。
黄道十二宮をなぞらえた十二の宮。

その奥には聖闘士を統べる教皇、最奥には赤子でしかない幼い女神。

「馬鹿らしい」

失笑する。

望まぬ異世界放浪を続ける身には、この地の理も物語も何もかもが「どうでもいい」の一言に集約される。
こうして聖域で雑兵をしているのだって、世界を渡る手がかりを手に入れ、十全に使いこなす為でしかない。
そう。だから必要以上に干渉しないし関わらない。

教皇の気配が、行方不明の双子座黄金聖闘士と入れ替わっている事も。
射手座の黄金聖闘士が裏切った時を契機に消えた、アテナの気配も。

どうでもいい事だ。

容易に思い至る真相にも、聖域の行く末にも興味は無い。
誰もいない神座を護って命を掛ける者達に、一抹の憐憫を手向けるのみ。





手中の椿を握り潰して、暗澹の未来に微笑した。




※展開メモ
・世界巡りで異能各種手に入れてるので、雑兵だけど黄金に勝てるレベル。でも傍観。
・その後何故か冥衣に選ばれめでたく聖域敵対ルート。勝てば官軍なのでガチで行くよ!
・まさに獅子身中の虫。聖域終☆了のお知らせである。




 ■ 強制ミステイク−うっかり衆目の面前にトリップした件−     ( IN 落第忍者乱太郎 )










   あ、    。







私は、      ――――――






「……………」

とろりとした、纏わりついていた闇が急速に失せ消える。
急速に思考が、感覚が、肉体が再構築されていく感覚はいつまでたっても慣れる事はない。
そのままブラックアウトしそうになる意識を繋ぎ止める、周囲からの視線は肌にぴりぴりと痛い。

ああ、どうやら私はまた死んだらしい。

見開いた瞳に映る、無数の人間達の姿に私は堂々とため息をついた。
周囲の雑音が煩い。音を音として認識できず渾然として混ざり合うそれは、情報とすら呼べない。
死んだ割に身体年齢が退行していない事から判断して、どうやら“渡り”の条件は満たしていた様子だが、思考が回復しても身体は上手く動きはしない。一度“死んで”“渡った”場合、身体の機能は早々に戻るものでもないのだ。
死後ボケは久しぶりだけど。……嫌になる。もうちょっと無害な人間ぶるべきだったか、あの世界。
そうすればフルボッコなんて事態は避けられただろうに。
ぬるく思考を一巡させて、突き付けられたクナイを、その持ち主ごと放り投げた。
ひゅおん、と直線で飛んでいく男。

「………脆いな」

轟音と共に、木々に叩きつけられて崩れ落ちるそれから視線を外す。
周囲がとても騒がしいが、そこは長年(あまり細かく思い出したくもないが)の経験で身に付けたスルースキルで万事解決。でも一人でゆっくり物を考える場所であるに越したことはない。
何より、この場では殺気が鬱陶しい。全力で不審人物だから仕方がないけど。
ざっと周囲を見渡して、周囲を(この中では)それなりの実力者が固めた老人に視線を止める。あれがこの集団のトップだろう。というか、子供のころに見たアニメがダブるのって気のせいだよね?ここって某忍術学園だったりするとかそんな事はないよね?結構物理法則トんでる部分のあるギャグ世界じゃないよね?ぜひとも肯定が欲しい。
ギャグ系は本気で怖いんだよね色んなモノ叩きつぶして粉砕するから。感覚ボケるし。
今回は死亡トリップだったから、手持ちの武器はない。が、逃げる事には自信があった。あとはどこまで先手を打てるか。できるだけ威圧して、得体のしれないバケモノだとでも印象付けておくのがベストか。
未知への恐怖ほど、人を縛るモノは無い――――強制排除させない程度ですませる、そのさじ加減は難しいけれど。
以上の思考を3秒未満で終えて、私は柔らかく口元を笑みの形にして、目を細めた。

「出る場所を間違えまして、大変ご無礼致しました。
 敵対する意思はありませんので、収めて頂きたいのですけれど?」

口調は穏やかに、しかしうっすらと殺気を含ませるのは忘れない。
先程男を一人軽々投げたからだろう、警戒は予想通りに強くなった。
攻めあぐねているのが手にとるように分かる。まぁ、こうも人数が多いと人質なんて取り放題だもんねぇ?



でも、こちらとしても不可抗力なので付き合ってもらおうか。




※展開メモ
・そのまま近くにいた小松田さん(用務員)を人質代わりに出て行こうとするも、人質のドジ発動に助ける羽目に。
・緊張感台無しのままに学園長が教師にならんかコール。意外と学園長と馬が合ったので打算含みで承諾。
・学園全体に超絶警戒される(しかし一部尊敬のまなざし)あやかし先生さんはーじまるよー。




 ■ 終りに寄せて−降り積もるもの−  ( IN テイルズ オブ アビス )



気だるい気分と一緒に出ていく吐息は白く、世界に紛れて消えてゆく。
そういえば、今日は大晦日だと今更ながらに自覚した。

「……掃除、今年もできなかったな」

今年も、懐かしい我が世界へと還る事はできなかった。世界を渡り歩くようになってどれだけの時が流れたのか――――それすらも曖昧となっているこの身が、ひどく憎く、壊したいほど厭わしく思える。
ふとした瞬間に浮かび上がる自殺衝動を理性の縄で縊り、は再度、ため息をついた。どうにもやりきれない。


彼女に“死”は無い。


死んだとしても、あるのは次の世界だけだ。
幼い身体を、また、育てる手間もある。自由に動けない不便さには苦い思い出しか無かった。
本当に、このサイクルは何処まで続いていくものだろうか。
不毛なメビウスの輪。その結び目を握る存在に、理由に思考は自然と向く。
思索を断ち切ったのは、最近では最早馴染みとなった少年と少女の呼び声だった。

己を探す声に、今日のスケジュールを振り返ったに非は無い。
少なくとも、現在は休憩時間中、だったはずなのだから。
数秒の間だけ黙考し、それでも出ない答えに首を竦めてからは屋根から廊下へと降り立つ。
そうすれば二対の視線が即座に彼女を捉えた。

!探した、です!」

「まったくだよ。手間を取らせないでよね」

きらきらと目を輝かせる桃色の少女と、憮然としながらも口元を緩ませる緑の少年。対照的な様子に「申し訳ありませんでした」と微苦笑を浮かべてみせて要件を問えば、上司でもある少年から返ったのは、たいそう含みのある笑顔だった。

「あの樽豚と、少々揉めてね?」

「モース様とですか」

「うん。嫌がらせも兼ねて、脱走しようと思うんだ」

つまり手を貸せという事か。

自分を使い、穏やかな年末年始をアリエッタと送りたいのだろう。
少年の役割を考えれば協力する訳にはいかないが、はこの世界の宗教に対しての思い入れが微塵も無い。
このダアトを腰を据える場所に選んだ理由だとて、ひとえに少年に拾われた恩義以外の何物でもない。

(………苦労させるのも悪くはない、か)

樽豚、もといモースの姿を脳裏に浮かべ、はあっさりと結論付けた。
尋常でなく大騒ぎになるだろうし、他にも迷惑を被る連中はいるだろうがそれより何より、少年の私兵に近い立ち位置であるに対する、件の豚の日頃からの態度の悪さには些か限度を超えるものがあったのだ。
何より、この拠点を失ったとしても痛手では無い。
信頼を寄せてくれている少年には悪いが、上手くすればこのローレライ教団を抜けるのに丁度良い口実となるだろう。
それらすべての情報を勘案して現状をたっぷり五秒かけて吟味して、は緑の少年に苦笑いを作って頷いた。


「止めた処で無駄、でしょう?
 私は貴方に従いましょう――――御心のままに、イオン導師」



ああ、忙しい新年になりそうだ。






※展開メモ
・拾われた成り行きでオリジナルイオン様の付き人(懐刀的ポジ)
・お子様には懐かれやすい。ので、気付けばお子様ハーレム(精神年齢がお子様っ子含む)
・オリジナルイオン様生存フラグ。レプリカイオン?なにそれそんなのないよ。
・ダアトを裏から掌握して骨の髄まで絞り取る凶悪主従にヴァン髭さんとモース樽さんガチ涙目。
・原作展開なんてものは存在しない。予言は覆すためにあるよ!