邪説・ジャックと豆の木




とある異国情緒たぁあっっぷりなド田舎に、貧しい親子が住んでいました。
普段は貧しいなりにも3人の食いぶちくらいは何とかなるのですが、ビンボ暮らしなのに浪費家な蛮お母さんのせいでいつのまにか借金がこんもりできていました。その額たるや、いつもは出稼ぎに行っている孝行息子の(愛称ジャック)が、久しぶりに帰ってきて銀次お父さんから借金総額を聞いた瞬間蛮お母さんを笑顔で吊るし上げたくらいです。ぶっちゃけ10遍生まれ変わって全人生費やさないと返せないくらいありました。
どんな使い方したんでしょうね、本当。
ひとしきり「銀ちゃんに苦労させちゃ駄目だよってボク言ったよね?」とイイ笑顔で実の母を9割死にくらいな目に合わせた後、母親をあわあわしながら看護する父を尻目に、はどうやって借金を返済するかを考えました。
とりあえずには非合法商売で貯えまくったお金があるので、半分くらいは返済できるアテがあります。
問題は残りの半分です。
舞い込んでくるお仕事を14回くらいこなせば何とか返済できるでしょう。
しかし、面白そうな仕事じゃなきゃやりたくない&楽しい事しかしたくないという人として色々駄目駄目な事を公然と主張するにとって、いくら借金返済のためとはいえ、仕事を引き受けまくるのは面倒だし面倒だし面倒な事でした。そもそも借金したの蛮お母さんですしね。と銀次お父さん関係無いですね。
どうすれば素早く一気に、そして楽に借金を全額返済できるのか。
常識人から程遠い事をうんうん悩んで、結論を出したのはきっかり10秒後でした。

「強盗がいちばんてっとり早いよね!王宮の財宝とか、全部もらってくれば全額返せるだろうし・・・・」

「だだだだダメだよちゃん!マクベスに悪いしそれって犯罪だよ!?」

実はこの国の少年王マクベスとはメル友な銀次お父さん、必死に息子を止めました。
無言な蛮お母さんは、現在モザイクが必要なギリギリ加減なのでツッコミようがありません。大変ですね。
自業自得とも言います。
ともあれお気に入りな銀次お父さんに素敵な提案を却下され、はしぶしぶ王宮襲撃を諦めました。

「じゃあさ銀ちゃん、誰のトコからなら強盗してきていい?」

「強盗から離れよう!?」

正論でした。
普通に犯罪ですしね。

「じゃあ蛮を売りに出す?パーツと本体別売りで」

「蛮ちゃんプラモじゃ無いよ!?」

「やだなぁ銀ちゃん、だから高値が付くんだよ」

「笑顔怖いよちゃん!!!」

最後の方はもう悲鳴でした。泣き入ってます。
ナチュラルに臓器売買と人身売買を提案する我が子に、銀次はどこで育て方間違えたんだろう、とちょっぴり切なくなりました。安心しろ銀次お父さん、その性質は天性で生粋だ。
話し合いの結果、金策に関してはまた後日という事になり、とりあえずは借金取りさん達の所へ借金の半分を返しに行きました。のラブリーさに目をつけた借金取りの卍兄弟なんかが、彼女を何処ぞのヘンタイさんへ売り飛ばそうとして、生まれてきた事を後悔させられる結果になったりという一幕もあったりしましたがまぁどうでもいい事ですね。あと卍兄弟をヒドい目に合わせたので借金総額の残りが一気に少なくなったりもしました。
いっそ借金取り皆殺しにしようか。
はそんな事も考えました。物騒ですが合理的ですね。るんるん気分でその提案を話そうと帰ってみれば、おうちでは銀次お父さんがミイラ状態の蛮お母さんにお説教を喰らっていました。
はすぐさま銀次お父さんを苛める蛮お母さんにトドメと言う名の制裁をくれてやろうとしましたが、寸前で止められ、理由を聞かされました。曰く、借金のカタにしようとした牛さんを、銀次お父さんが困っていた通りすがりの魔女マリーアに頼まれ、豆一粒と交換してしまったそうです。等価にはほど遠いトレードですね。

「でも蛮ちゃん!あれって魔法の豆なんだよ!?」

「どっからどー見ても単なる豆だったろーが!騙されたんだよ気付け!!」

「実物見てないから何とも言えないなー」

魔法の豆とやらは、が帰ってくる前に捨てられてしまったのだそうです。
借金が減ると思ったのに!と怒り狂う蛮お母さんの頚動脈を締めてオトし、借金取り皆殺しの提案を銀次お父さんに却下されてふてくされたその翌朝。




おうちの裏手に巨大な豆の木が生えていました。




「ありえねーだろオイ!どーなってんだ!?」

「やっぱり魔法の豆だったんだ・・・・・!」

非常識だと喚く母、感動に目を輝かせる父。
雲を突き抜けて先の見えない豆の木を見上げ、はひとつの決断を下しました。

「蛮ー!銀ちゃーん!ボク、てっぺんまで遊びにいってくるねー!!」


気になったらしいです。

お弁当と水筒を用意してもらって準備も万端。
てってけてーと重力法則を無視して豆の木を駆け上がり、はあっちゅーまに雲の上までやって来て。



「貴様、何の用だ?」



無駄に態度デカくて偉そうな呪術王に出会いました。
速攻でボコって雲の下に蹴落としました。
いい気分に水を差されたのがムカついたらしいです。犯罪の理由なんて些細なモノですよね。
こうして雲の上の支配者を気分で叩きのめしたは、これまた雲の上にあった呪術王の邸宅にお邪魔して全財産根こそぎ強奪、そのお金で借金を完全返済して残りは両親にプレゼントしたそうです。



めでたしめでたし。





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こんなジャックは嫌だ。