6V6 Single / Tube Guiter Amplifire




 2002年も秋が深まる頃、いつものお店で酔っ払っているときに、お店のお兄さんに「Tubeのギターアンプ作ってくださいよ。」 と言われ、酔った勢いで引き受けてしまったものですから、初体験のギターアンプを作るはめになりました。 とはいえ、ギターなど 中学時代に安物のフォークギターを弾いた(さわった)ことがあるだけですから、ギターアンプなんて良くわかりません。少し調べて、 その独特な世界が見えてくると、正直まずいこと引き受けちゃったと後悔しました。 
 幸いネット上には、良くわかる解説回路集(コレクション)がありましたので、 なんとなく雰囲気はつかめましたから、まあとにかくでっちあげてみるかというわけでやってみました。 

 お兄さんの希望が「普段に弾けるなるべく小さいの」ということでしたから、回路はFenderのChampシリーズという 小型アンプ(6V6シングル)ものをModefyしてみることにしました。はじめは大量にストックのある6005(6AQ5のSQ管)を軽めのPPでと 考えたのですが、とにかく初体験ですし、まずは定評あるものをネタにして、謙虚に勉強というところです。シングルでもそのまま6005で 良かった(6005=6V6相当MT管)のですが、一本だけだとやっぱり見た目が寂しいので、少数ですがこれも手持ちの6V6GTAを起用です。 また、整流管は原回路が5Y3(定番)ですが、傍熱管の6AX5GTを使いました。 理由はケミコンに優しい…というのは建前で、要はいかにも 引き締まったGT管らしい姿が気に入っているだけのことです。

 とはいえ、原回路を見てみると、総じてパワー管の許容損失をオーバーした使い方で、かつ木箱に入っているんで放熱も悪く、 まさに絞り出すという使い方が多いようです。真空管全盛時代ですから1〜2年持てばよかったんでしょうが、今はそんな贅沢な使い方は 出来ませんし、なにより真空管好き人間の沽券にかかわります。 ここは球にやさしく、Epを250V弱としました。  ( 回路図PDFです。)  チョークコイルは安く・軽く上げるため使っていませんが、五極管/ビーム管のシングルはSGにさえ気を使えば 簡単なCRフィルターでハムなんて出ないものです。(実際今度もそうでした。)

 まあ、回路は実に簡単ですが、シャーシというかケースには時間が かかりました。 最終的な外観は冒頭の写真の通りですが、放熱と真空管を見せるという見た目を考慮して、一番大事なはずの スピーカーを小さくし、容積の半分がアンプ部という本末転倒な格好になっています。(アンプ工作が趣味の人が作るとこうなる…。)  当初上部カバーはパンチングメタルを曲げてで簡単に作るつもりだったんですが、肝心のパンチングメタルがふにゃふにゃのものしか売って なかったので、持ち歩くものだから丈夫にしなくっちゃという脅迫観念から、カチカチに熱処理(多分T-6)した1.6mmのジュラルミン板を 切って、パンチングメタル状に孔をあけて使うことにしました。 だってせっかくボール盤(一家に一台も可という位の安物ですが、 結構使えます。)買ったことですし。 カチカチに熱処理してあるジュラルミンは、サクサクと孔が開いてキモチいいです。 バリもほとんど出ません。  というわけで全面と上面にケガキ→ポンチ→2.5mm下穴→5.1mmの孔を約500個開けていきました。(写真)   どう考えても利口な人のすることじゃないですね。

 スピーカーはネット通販(コイズミ無線)で仕入れたFOSTERのC130K16という 13cmダブルコーンで90.5dB/W/m、定格入力15W(\1,980)という代物です。 小口径の楽器用スピーカーが見つからなかったので、連続5W 程度でも長期間大丈夫なように頑丈そうなのを選びました。 能率はやはり低めですが、「気軽にフルテン」がキャッチフレーズ(?)の家庭用アンプですから 良しとしました。 木製ボックスは15mmのパイン集成材で、敢えてオイルは使わず、ニス3回塗り+研磨仕上げです。 裏面にはそれらしく孔を開けてマルチポートバスレフ風にしています。

 特長のあるFenderのトーンコントロール特性など、実際どうなったか確認する意味もあり、一応特性は測っています。NFBは7dBで、 最大無歪出力3W(クリッピングポイント)、有歪?出力5Wといったところでした。トーンコントロールの特性は、定数が同じだから当たり前なんでしょうが、 シミュレーションとほぼ一致しています。  さて肝心の音ですが、お兄さんの試奏(むちゃくちゃうまい人らしいが、素人が聞いた限りでもホントに上手かった)は、私の耳にも いい感じでした。彼も、まあ、お世辞半分でしょうが「いいですね〜。ピッキングがはっきり出るんですよ。」と言ってくれてました。

 最後になりましたが、いずれにしても身内以外に自作アンプを渡すと言うのは、いくら何年もやっていると言っても所詮素人の趣味ですから、 特に安全性の面で実はあまりほめられたことでは無いと思っております。 今回も、その前にお兄さんのいるお店にアンプを置いてきた のも酔った勢いですが、作る楽しみや、喜んでくれる人の存在を差し引いても、ちょっと調子に乗り過ぎたかなと反省しています。 今回も、部品取付けの機械的強度や放熱等には自分用以上に気を使ったつもりですが、だからと言ってもし事故があったら、なんの言い訳にもなりませんものね。 まあ、このあたりはアンプを渡すときに彼にもちゃんと話してありますが…。


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