やはり酔った勢いで受注してしまったアンプです。 どんなアンプかはお任せだったので、コンパクトに作ろうと大量に持っている6005(6AQ5のSQ管)の軽い動作のPPで計画しました。 Epを200V位として、Ip(2本)を50mA強にしてまあ4W位出ればいいかなというのが基本設計(?)です。
ノグチトランスさんのラインナップにPMC-130Mっていう180V-130mA,6.3V-2Ax2の小型パワートランスがあり、小さく作りたかったのでこれでいくことにしました。 OPTは同じくノグチトランスのPMF-15Pです。
回路構成は、前段は12AX7の差動、出力段は共通カソード抵抗による自己バイアスのA級PPとしました。 なんとなくですがビーム管のA級PPにこだわり、出力段は流行の差動にしていませんが、共通カソードにすると小出力時にはパスコンにはほとんど電流は流れないはずで、ほんのちょっとですが擬似的に差動かもしれません。 ペアチューブなどもちろんありませんが、全部で50本くらい在庫があるのでそれなりに揃ったペアは選別できるだろうということで進めました。
私にとってアンプ作りはシャーシ/ケースを作ることと同義になっていますので、まずは板金細工です。天板/底板はカチカチに熱処理した2mm厚のジュラルミン、側板は1.2mm厚のナマクラな普通のアルミ板とし、下の写真(左2枚)のように水道管継ぎ手を冶具にして手で曲げ加工しました。 本人的には今回はこの丸みがデザインのポイントです。側板と天板/底板は10mm角(1.2mm厚)のアングルで結合していますが、正面にねじを出したくなかったので、板に皿を取ってからアルミの鋲で結合し、表面をやすって平らにしています。 右の写真は組立/塗装前の板金部品一式です。なお天板サイズは220mm×170mmで、ipadとほぼ同じサイズです。
いつものことですが、板金工作の時間に比べると一番楽しい配線作業時間の短いこと。それでも人に渡すものですから、普段はやらないからげ配線など自分としてはかなり慎重に時間をかけてやっています。それでもやっぱりいろいろやらかしました。失敗談は以下です。笑われるかもしれませんが、読んでいる方の参考にでもなればと書きました。
(1)初段の定電流回路:CRDを間違えた。
手持ちに1.5mAのCRDがあるはずということで使おうとしましたが、006P電池と適当な抵抗でチェックしてみると値がとんでもなくてびっくり。Webでカタログを見ると本体表示は同じでも文字色が青だと15mAのCRDであることが判明。(1.5mAのは黒文字だそうです。) CRDを2本通販で買うのも、買出しに行くのも面倒でジャンク箱の中から2SK168を2本見つけ出し、680Ωを挟むと1.6〜1.8mAの定電流特性を示したので代用しました。
(2)初段のマイナス電源:かつて経験したことのないような大きなハムが乗る。
なかなか原因わからず一日悩みましたが、初段のマイナス電源を試しに006P電池に変えてみるとピタっと止まりました。 当初は初段のマイナス電源はヒーター巻線を整流して作っていましたが、同じ巻線には12AX7のヒーターもつながっていました。 定電流回路を挟んでいるからヒーター/カソード間の交流インピーダンスはめちゃくちゃ高いはずなので、ヒーター/カソード間のリークでハムが乗ったんじゃないかなあと思いつつ、とりあえずB電圧の帰路に47Ωを挟んでマイナス電源を作り、つなぎ換えました。結果、上記の推測が正しいかどうかはともかく、安物オシロのY軸を最高感度にしてもほとんど直線にしか見えないほど静かになりました。 なお、47Ωは手持ちに3W級がなかったので470Ωの1/4Wカーボン抵抗を10本並べてアース母線にくっつけました(笑)
最終的な「回路図」と「はらわた」は以下です。(クリックすると拡大します。戻るときはブラウザの戻るボタンで戻ってください。) 回路図の定数でNFBは約8dBです。 はらわたは、慎重に時間かけてっていってる割には汚いですね。「最近老眼がひどくなって」って言い訳しておきましょう。(笑) なお、球の差し替え1回でOPTのP-P間電圧は両チャンネルとも25mV程度になりました。P-P間巻線抵抗は実測500Ω程度でしたから、アンバランスは1mA程度ですのでこれで良しとしています。
一応特性も測ったので載せておきます。ひずみ率はWaveSpectraを使わせていただき測定しました。L/Rでちょっと違いがありますが、各chごとの周波数による差は少ないです。最大出力前にちょっと下がるのはビーム管の特徴のようですね。 方形波応答はその下に載せましたが、まあこんなもんと思います。(8Ω抵抗負荷での波形です。) ダンピングファクタは約2.2(1kHz)でした。
音は私の駄耳でコメントすることは避けたいですが、「まあ普通に鳴る。低域は割と骨太く聞こえる。」ってとこです。 さて、注文主は満足してくれるでしょうか。
真空管ホームへ
このページはリンクフリーですが、内容の無断複製・転載はおやめください。